それはカラスがつないだ

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「宮ちゃ~ん来てたんだあ。」 カラカラっとと引き戸を開けて入ってきたのは、 ノムさん、こと野村八起(やおき)さん。 『結婚なんて』が口癖の常連。 女の人にひどい目にあわされて、 一生独りと決めているようだ。 この人飲むとすぐ俺に絡む。 まさかそっちの気があるんじゃないかとちょっと苦手なんだ。 「お、俺帰ります!」 「え、?って親子どんできたよ」 「あ、そうでした」 半分持ち上げていた腰をもう一度戻した。 「宮ちゃん大丈夫だよ、あの人最近荒んでないから、  絡まれたりしないよ」 「へ?」 「なんか可愛い女の子と一緒に住んでるらしいよ。 籍入れたんじゃないかな?たしか 「籍!!ど、どういうことですか?」 「まあ、落ち着いたってことじゃないの?」 そうか、自意識過剰だったのか、 というか、 そっちの気は無いってことか。 「宮ちゃん、俺ね~結婚したんだよ」 「お。おめでとうございます?」 「ははは、サンキュー!サンキュー!」 「あ、あの、以前結婚には興味ないって言ってませんでした?」 「あー、それな。 なしなし、忘れて! それがさ~、いいんだよ。 家に人が待ってるって なんて言うの、 懐に焼き芋抱えてるみたいな、 そう言う感じ。 やあ、若い宮さんには分かんないだろうな? あ、ごめーん軽くのろけちゃった? ごめんごめん。 あれ?そういえば今日はあの日だったな~、 ダメじゃん俺、 こんなとこで油売ってる間は無いんだよな。 あ、楡崎さんごめん俺帰るわ~」 あははは~とご機嫌で帰っていった。
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