はじまり

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********* 空を見上げていた。 カァーカァ- は? カラスかよ、 まるで俺を象徴しているようだ。 バレンタインデーなんてものがこの世に存在するおかげで、 世の中の風潮が男の価値を錯覚するんだ。 普段から、明るくて人好きのするやつは、 女子たちから山のように義理チョコを貰う。 決して本命チョコではないけれど、 友達の多さをその数が語る。 イケメンと称されるやつや、 将来有望な秀才は、 数もさることながら、 かなりの本命の気持ちの入った、 手造りチョコを手にしている。 その日一つも手にできない男は、 世の中からその存在を否定されているのではないかと錯覚する。 「ちくしょう」 その日俺は初めてできた彼女から、 本命チョコをもらえると、 母が毎年くれる義理チョコを振りきって、 唯一貰えるであろう本命チョコのため気持ちを盛り上げ、スタンバイしていた。 今日もらうのは、なんて言ったって初の本命チョコ。 一人前の男として認められた勲章みたいなものだろう。 なのに…… 彼女から与えられたのは、 本命チョコどころか義理チョコでもない、 別れの言葉だった。 「ごめん。 やっぱりじぶんに嘘はつけなくて」 「え?」 「前から気になる先輩に本命チョコ渡したら、  OK貰っちゃった。  私たち別れよう」 「何言ってんだよ?俺のこと好きだって言ったの御園じゃん」 「あー、だから、その時はそう思ってたんだよ。 っていうか、 先輩は無理だと思ってたからっていうか、 宮君彼女いないって言ってたし。 でもさ、 私宮君とはやっぱ友達かなって思う。 だからごめん」 ……絶句の末の撃沈。
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