黒は廻る

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「お先に失礼します。」 早番だった私は、いそいそと、部屋へ戻った。 今日は久しぶりに二人でお出かけなのだ。 え?誰って? なお君に決まってるじゃないですか。 あの事件のあと、 お互い遠慮の壁みたいなものが、 一気に無くなった気がする。 着替えを済ませて、く 階段を下りると、すでに直くんが待っていた。 「しのちゃん」 「なお君、早かったのね」 「うん。まあ、待ちきれなくて」 「そっか、楡に行くの久しぶりなんだっけ、 私もそうなの。 ゴロちゃんの料理楽しみだね」 「いや、そうじゃなくて……」 遠慮がちに私の手を取ると、 指を絡めた。 きゅっと力を込めると、 はにかむ様な笑顔で私を見つめて、 答えを促す。 そっか、もお、なお君可愛すぎ。 「私もだよ」 なんだろな、このバカップルぶりが、 たまらなく幸せだ。 今日は義兄ゴロちゃんのお店、楡(にれ)の閉店パーティだ。 お姉ちゃんが妊娠して、 いよいよゴロちゃんも深夜でないお店にシフトすることにしたのだ。 KAOの店長の奥さんが経営するカフェチェーンにする話もあったんだけど、 やっぱり自分独自でカフェ開く事になったみたい。 ゴロちゃんのとこのケーキは、 うちの店から仕入れてくれることになったし、 それを作るのは私に決まってて、 今からわくわくしている。
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