黒は廻る

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会場は相変わらず美味しい料理と、 ゴロちゃんの話術で大盛り上がり。 私たちはカウンターの奥に座ってその様子を楽しんでいた。 家の家族や常連さんとかとにかく入り混じってて、 ガヤガヤとにぎやかだった。 直君は何か話しかけるけれど、 よく聞こえなくって、 うまく会話にならない。 意を決したように私の隣に座ると耳元で、 大きな声を出した。 「ねえっ!しのちゃんお願いがあるんだけど!」 「えー?なあに?」 「今度ーっ、 うちの学祭の日なんだけどさ、 その日休みとったって言ってたよね!」 「あーっうんもちろん行くよ。 楽しみにしてるんだ」 「いや、そうじゃなくって、  せっかく長く一緒にいられるんだから、  学祭さぼってどっか行かない?」 「えー?」 「だめかな? ちょっと車で遠出して軽井沢とかどう?」 「え?でも車って、免許持ってたの?」 「一応ね。バイト運送やだったでしょ?」 「でも、バイク便だったし、バス使ってたから」 「まあ、車は持ってないけどね。 維持費勿体ないし、バイクで十分だったからね。 車はレンタカー借りていけばいいかなって思うんだけど。」 「でも、あの、運転とかしてないと、あの……安全?」 「もう信用ないなあ。 大丈夫!パン屋の配達とか結構しょっちゅう運転してるんだけど」 突然のお誘いに驚いてしまって躊躇してしまっている。 でも、うれしいかも。 私は土日仕事あるし、 なお君も毎日卒論や内定貰う為に忙しそうだし、バイトもやってるから、 仕事が終わった少しの時間週に2~3回会えればいい感じだから。 大学祭の日に休みをもらって、 デートの気分を味わうのを楽しみにしてた。 「うん。いいかも。それいいっ!」 「ほんとやった!どこにしようかな?」 なんかいいなあ、 少しずつ、恋人っぽくなってきてる気がする。 なお君の横顔見ながら、幸せだなあって思う。
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