運命ノアール

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なお君は給食の食品を扱う会社に就職した。 毎日あちこちの工場に出向いて、 買付や交渉をする部署らしい。 まだわからないことだらけで、 大変そう。 それと、時々悩んでいるみたい。 どうやら、 原因は以前バイトしていた、パン屋さんのことらしい。 冷凍パン生地の宅配があたって、 企業として立ち上げたのだけれど、 人手が足らないのだという。 元々、就職するとき、残って欲しいと請われたのは知っていた。 学生のころから事業の立ち上げにかかわってきたなお君は、 きっと今の仕事より、 やりたいと思っているのだろう。 この間相談された時、 「やればいいと思う」 と進めてしまった。 それは私の心からの言葉では無かったけれど、 それが一番いいのだと思ったから。 「しのちゃんは、うそつきだね」 心の声はなお君にはばればれで、 気がつけば、なお君の腕の中。 私の小さなしっとさえ見透かされちゃうものだから、 なお君の前では小さな我慢さえ無駄になる。 「本当にそう思ってる。 やればいいってホントに思うよ。  でも、 ちょっとだけ心配なんだもん」 「葉月ちゃんのこと?」 「うん」 「葉月ちゃんには、……心配いらないんだよ」 直君は吹き出しそうになりながら何かを思い出してるみたいだった。 「何?」 「まだ、秘密。その内ちゃんと話すからさ」 「もう」 なお君は大人になったなって思う。 就活はすごく大変だったみたいだけど、 それを経て社会人になった彼は、 一回り大人になった。 早くから社会人と言ってはいても、 周りに甘やかされていた私はそんな彼がすごくまぶしい。 きっとなお君はもっともっと大きくなるんだろうな。 私ももっと頑張らなくちゃ、なお君に見合う女でいたいから。
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