運命ノアール

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------------ 「しのちゃん!、しのちゃんてばっ」 ぼんやり考え事をしてた私はバレンタインでにぎわうカフェの喧噪に引き戻された。 「持ち帰り用のフォンダンショコラ終わっちゃったんだけど、  在庫ないの?」 「あ、うん。まだ冷凍庫に、あらら、もう空っぽ」 「そう、だから聞いたの。じゃあ、もうおしまい?」 「そうみたい。トリュフの詰め合わせも売り切れちゃったし、 後は生チョコとガトーショコラが残ってるだけ。 それもここに並んでるので終わりみたい」 「わかった。お勧めしてみる」 「あ、まだ二つショコラノアール残ってる。これお勧めして」 「だめでしょ? それは彼と二人で食べるって取っておいたものなんじゃない?」 「うん、でも大丈夫、  彼に渡すのはもっと特別なの用意してあるから」 「ほんと?じゃあ、お勧めしちゃうよ?」 「おねがい」 本当はなお君と今夜食べようと思って取っておいたのだけど、 でも、できるなら今夜幸せな時間を過ごす人が一人でも多くいてほしいと思うから。 それが私の作ったチョコレートと一緒だったなら幸せだ。 それに、 ショコラノアールはもう何度も食べてもらってる。 それになお君は言わないけど、知ってるんだ、甘いものあまり得意じゃないってこと。 だから、 今日はそれじゃないもので心を伝える。 とっておきよりとっておきなもので。
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