運命ノアール

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「え?うそ」 部屋に入ってびっくり。 「じゃーん、ハッピーバレンタインディ!」 手放したはずのラストのショコラノアールが二つディナーと一緒に準備されてた。 「どうして……?」 「最近は逆バレンタインっていうのが流行ってるんだってさ」 「ショコラノアールがどうしてここにあるの?」 「本当は、しのちゃんがきっと準備してるだろうなって思ったんだけど、 他のは売り切れてて、 被っちゃったかな?」 「ううん、それ、私が用意してて、でも、 お客さんに譲ってしまって、  まさか、それが、 なお君だったなんて……」 他のには今日に会わせてホワイトチョコのハートを乗せたけど、 最後に譲ったこれだけには、 初めて作った時と同じ、ブラックチョコレートの羽根を乗せた。 二人の思い出全部を詰めて作ったレシピそのままに。 本当のショコラノアール。 直君が甘いもの得意じゃないから、 なんて手放しちゃった特別。 ホントはちょっぴり後悔してた、 なのに買ってくれたのがなお君だったなんて。 お客様がなお君だって誰も気が付かないなんて、カフェの中バタバタしてたもんね。 「ほんとにもう、なお君てば……」 私の思うのと同じくらい、 ううん、 それ以上にこの日がこの人にとって大切な日だったんだな。 「え?泣いてる?  ごめん、なんか俺やっちゃった?」 「ううん、あのね。  あの、 私ドアの外に荷物置いてきちゃって」 「え?そうなの?」 「とってきてくれるかな」 「あ、うんもちろんだよ」
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