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あれから3年。
専門学校を卒業し、
バティシエとなった私は、
忙しくて目が回る2月を過ごしている。
あの日、憧れの彼に作ったチョコレートを、
今は、お客さんの笑顔を祈りながら作っている。
「しのちゃん。今日もお疲れ様。
今日はもうお客さん来ないと思うから店じまいしよう」
「あ、はいお疲れ様です」
ラッピング用のリボンを丁寧に箱にしまいながら返事をした。
「しのちゃん待って」
店長の夏尾さんはあわてて厨房の奥に消えて、
暫くするとにこやかに戻って来た。
「これ、俺からしのちゃんに、
バレンタイン」
「わ、本当ですか。ありがとうございます!」
「日頃の感謝をこめて!、ね?」
「凄い、売りながら私も欲しいと思ってたんです。」
「だよね。俺らって自分で買うとかないから、
実際に手にすることないよね?。
ましてや、しのちゃんは女の子だから、
義理チョコさえ貰わないでしょ?」
「店長は、奥さんが家でごちそう用意してるんでしょ?」
「うん。そして俺はこれをね!」
「え?私のと同じですか?」
「はは、まあねでも込めた気持ちは違うから」
「あは、ごちそうさまです」
パティスリーKAO
のシェフ兼店長は愛妻家。
奥さんはこの店のオーナーで、
市内にレストランやカフェなど、
うちのケーキ店の他、3店補経営している。
女性実業家で有名。
かなり年上らしいけど、
店長がもうアタックして結婚したらしい。
店長は決してイケメンの部類じゃないけれど、
温かくて誰もがすきになる素敵な人だ。
こんな夫婦になりたいと憧れている。
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