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「げっ、やばいかも。」たかとくんは学校から帰り、庭にいるお母さんを一目見てそう思った。お母さんが赤色に見えたからだ。
たかとくんは、不思議な力がある。人の心が読めるのだ。ただし、「色」でしか読めない。例えば、赤色。怒ってそうなときとか、やる気満々っぽいとき、恥ずかしそうなときなんかに、赤色に見える。でもそれは、最初からわかっていることじゃなくて、たかとくんが10年生きてきて、ようやくわかってきたことなんだけどね。
お母さんはたぶん、怒ってたんだ。なんでかわからないけど。もしかしたら、この前の、悪かったテストを押し入れに隠したのが、ばれたのかもしれない。だから赤色になって、庭で僕が帰るのを待ってるのかもしれない。そう思うと怖くて、たかとくんは家に帰れなくなった。「公園にでも行こうかな。」そう思って、たかとくんはお母さんに見つからないように、歩き出した。
公園にみほちゃんがいるのが見えた。みほちゃんはたかとくんと同じクラスの女の子だ。明るくて、ちょっぴりばかで、とっても優しい、そんな子だ。みほちゃんをびっくりさせてやろうとたかとくんはいたずらな気持ちになって、忍び足で公園に近づいた。すると、みほちゃんが誰かと話しているのが聞こえてきた。
「おじさん、きみにチョコレートあげたいんだ。ちょっとついてきてくれる?」「やったー!私チョコレート大好きっ!」みほちゃんは黄色になった。とてもうれしそうだ。だけど、気になったのはおじさんのほうだ。「このひと、悪い人かも。」たかとくんがこう思ったのも無理はない。たかとくんは、こんなに汚い色をした人を初めて見た。みほちゃんがおじさんについて行って、公園から出て行った。それを見たたかとくんは心配になって、公園で投げやすそうな石を3,4個ポケットに入れ、公園を飛び出した。
「ここだよ。」
おじさんは人気のない道に止めてある車の前に、みほちゃんを連れてきた。
「おじさん、チョコレートは?」
みほちゃんはさすがに不安そうな声を出した。すると急に、おじさんは怖い顔になってみほちゃんをむりやり車に乗せようとした。みほちゃんは凍えるように冷たい青色になった。みほちゃんは暴れて逃げようとする。「助けなきゃ。」たかとくんはそう思った。たかとくんはおじさんの頭に狙いを定めて、思いっきり、石を投げた。ガンッと頭と石がぶつかる音。当たった!おじさんが頭を押さえて痛がっている間に、たかとくんはみほちゃんの手を取って走り出した。みほちゃんは走りながら、たかとくんが助けてくれたのに気付き、安心したみたいだ。緑色になっていったのがたかとくんにはわかった。曲がった先に、交番とおまわりさんが見えた。
最後は、おまわりさんが何とかしてくれた。何があったか話すと、おまわりさんはおじさんをなんとか捕まえてくれたし、たかとくんとみほちゃんのお母さんをそれぞれ呼んでくれた。お母さんたちは「もう!心配させて!」と怒ってるように見せていたけど、実は緑色になっていることを、たかとくんは知っていた。たかとくんはお母さんが赤色のままじゃなくて本当にほっとした。そろそろ帰ろうか、と思っていたら、みほちゃんが近づいてきた。
「たかとくん、今日はホントにありがとっ!」
そう言ってにこっと笑うみほちゃんがピンク色になった。それに気づいたたかとくんのほっぺは真っ赤になった。
帰り道、お母さんはずっと黄緑色で、たかとくんも嬉しかった。そう思っていると、急にお母さんがみるみるうちに赤くなっていった。
「そういえば、この前のテスト、、、」
たかとくんは真っ青になった。
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