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今日はE組の授業がない日だ。
嬉しい……。
小さな幸せを噛みしめながら、僕はベッドから這い出した。
冗談抜きで、E組がある日とない日では、朝の目覚め方まで違う気がする。
昨日、イヤホンを引っこ抜いた後、立ち上がった五藤は僕を無言で見下ろした。自分より二十センチ以上上背のある人間から、威圧的に睨まれるのは恐怖だ。
怖くてなにも言えないでいると、彼は徐に立ち上がり、教室を出て行ってしまった。まさか、出て行くなんて予想外だった。
今までは注意しても無視するか睨むだけだったのに。
五藤のあの目が、脳裏に焼きついていた。彼はどうして、あそこまで反抗的なんだろう。とことん僕みたいな教師が嫌いだとしても、恐くてしかたがない。
五藤の、前期期末試験の国語の成績は最悪だったし、他の教科はそこそこ成績が安定してるのに、僕を毛嫌いするあまり、教科まで嫌いになってしまったのだろうか。
でも、怖くて本人に直接訊けない。てゆーか、話しかけるの無理……。
「もおー……どうしたらいいんだよ」
また、ため息が出た。
職員室脇のテラスで昼食を摂ったあと、僕は資料室へむかった。二時間後の授業で使う教材をうっかり自宅に忘れてきたのだ。
昨日の恐怖体験を頭の中でリフレインしてたら遅刻しそうになってしまい、慌てて自宅を飛び出したから。
ああ、ホントに僕ってしょーもないな……。
落ち込んで背中を丸めてトボトボ歩き、廊下の向かいに生徒の姿を見つけてシャキッと背を伸ばした。(なんか自分で笑えるな、この行動)
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