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少年と称するにはあまりにも大人びた、堂々とした態度や筋肉質な身体の持ち主だ。
端整な顔立ちを覆う真っ黒で不揃いな髪が、野性的というか冷徹に見えるから見るたび怖い。
こんな顔で五藤は毎回、射るような目を僕に向けてくる。僕はこの三人組のうち、五藤が最も苦手なのだった。
「おっとっと」
スキンヘッドがペットボトルを拾い、僕めがけて放った。
「あっ」
それは僕の二の腕に当たり、乾いた音を立てて床に落ちる。
「あっ、手がすべっちゃった~。大丈夫? 松澤ちゃん」
「ばーか、なにやってんだよ」
へらへら口もとをゆがめる二人とは対照的に、五藤はなにも言わず、僕に鋭い視線を浴びせた。いつものことだけど、本当に怖いのでやめてほしい。……とても本人には言えないけど。
「お、おは……」
よう、が喉元で引っかかりそれ以上言葉が出てこない。朝の挨拶をするだけなのに、なんでこんなに怖いんだよ……。
五藤と視線が合ったのはほんの数秒間のはずなのに、ひどく長く感じた。
「ほら、行くぞ」
歩き出した五藤の一言に、二人は弾かれたように「待ってよ貴也!」とその後を追い走っていく。
少しずつ遠ざかる三つの背中に視線を泳がせ、僕はひっそりと息を吐いた。なんか、子供同士の初歩的ないじめを受けた気分だ。
なんであんなに怖い顔すんだよ……僕がなにしたっていうんだよ。
彼は僕の顔を見るたび、親のかたきのごとく睨むのだ。
そりゃ、授業中に漫画読んでいれば注意するし、反抗的な態度取られりゃ注意するし、居眠りしてれば注意するだろう。
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