ハッカーの姉妹

私は少し悩んだ末、まずは今何が起きているのか率直に質問してみようと考えた。

「今何が起きているのか教えていただけますか？

　私も万能ではありませんので、お受けできるかどうか判断したいです。」

私の発言に神楽さんが今起きている重大な事件のことを話してくれた。

神楽さんの話では、米国ＣＩＡ（中央情報局）から米国国防総省のネットワークに何者かが侵入したらしいという連絡を受けた。

この侵入者が米国国防総省のネットワーク内で何をしようとしているのかは不明だが、侵入者の行動から予測して核ミサイルの発射を企てているらしいという話だった。

神楽さんの調査では、現時点では核ミサイルを制御するサーバコンピュータには侵入できていないということだが、時間の問題だろうという話だった。

私は米国国防総省のネットワークを覗いてみないことには、詳しい状況を把握することはできないと判断した。

「神楽さん、ネットワークを見せていただけますか？」

この言葉に神楽さんが、

「やっていただけるのですね！

　本当にありがとうございます。

　米国国防総省のネットワークに入るための空閑さんのユーザＩＤをすでに用意してあります。

　このユーザＩＤには、全ての権限が与えられています。」

と少し嬉しそうに教えてくれた。

私は神楽さんに案内されてサーバコンピュータがあるマシン室に入ると、そこに置かれているサーバコンピュータの規模に驚かされた。

「ここには、スーパーコンピュータと数多くのサーバコンピュータが置かれています。

　この施設は米国政府と日本政府が共同で作った極秘施設で『国際防衛戦略研究所』です。」

神楽さんはこう話しながら私を端末に案内してくれた。

「空閑さん、ここから米国国防総省のネットワークに入ることができます。」

私は早速神楽さんから教えていただいたメインサーバにログインし、ここからネットワークを介して各サーバコンピュータの状況を確認した。