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プロローグ「突然の別れ」
私の名前は鈴木 月夜、苗字は普通だけど名前はちょっといい感じな中学校三年生。
今は『愛敬園』の鉄ちゃんの部屋でババ抜きをしている。鉄ちゃんの名前は岩壁 鉄。クラスの背の順で並べば一番後ろで、——中学校に入るまでは私の方が全然背が高かったのに、中学一年生で20センチも伸びて抜かれた、くっそー——名前に負けずに体なんかかっちこち、柔軟ができないってことじゃないよ、すっごいマッチョなんだ。暇さえあれば、腹筋やスクワット、腕立て伏せなんかして体を鍛えている一種の筋肉マニアだ。
小さい頃はいつも一緒で、部屋も同じ部屋だったのに小学校四年生になったころ、園長先生が——園長先生ってねママの事だよ、ここにいる全員のお母さん——男の子と女の子を部屋分けしちゃった。そして中学生になるとお互い一人部屋になったからこうして鉄ちゃんの部屋に遊びに来てるってわけ。
私が持っているトランプはジョーカーとハートのエースのニ枚、鉄ちゃんは一枚しか持っていない。そう最後のスペードのエースだ。だって他のカードは全部真ん中に山積みになって捨てられているから、それしかないでしょう、どう考えたって、これでもしもだよ、もしも鉄ちゃんが持っているカードがスペードのKだったとしたら大問題だよね、どちらかがイカサマしたか、カードがおかしな事になってるか………
おっと鉄ちゃんの手が伸びてきた伸びてきた、ああーやばいハートのエースを狙ってる。そっちじゃダメ、ジョーカー取れーーーーー。
ひっひっひっ、やっぱりー、私が願うと指が自然とジョーカーにいくんだ。
赤ちゃんの頃からの付き合いだから、ぜーんぶお見通し、ババ抜きで一回も、一回もだよ鉄ちゃんに負けたことがない。
鉄ちゃんとは愛敬園で姉弟同然に育った、でも私のほうがお姉さんっぽいから姉弟。
園に預けられたのも、まあ、一歳児の記憶なんてあってないようなものだから自分じゃ覚えていないけどほぼ同じだったらしい。
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