魔王だって想い出を語る

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 ロの字になっている城の真ん中にある最下層魔族の村は平和で、畑仕事をしている魔族や家畜の世話をする魔族がいて、幾つかの集落を作っている。  上位魔族や下位魔族の好む野菜を育て、自分達の口から余った物を納めている。  勿論最下層が一番数が多くてその数を賄うだけの広大な中庭である。  時折、暇に任せて下位魔族が魔物を狩ってきて最下層に与えたりするらしいけど、基本最下層は人とあまり変わらない。違うのは魔族を恐れない事と毒が効かない事くらいで、だから下位魔族も無毒有毒に関わらず狩った物を中庭のどこかに放置する。  放置された魔物は、何故そこに居座っているのかわからないけど、中庭に住み着いているドラゴンが食べてしまう前に最下層が発見した場合は最下層が食べるし、ドラゴンが先なら、ムカつくことにわざわざ最下層の集落まで行ってこれみよがしにニヤニヤしながら食べるらしい。  あの、(俺的)パムの実事件の後何度も遊びに行き集落の人たち・・・いや、元村人と話してる内に聞いた事だけど。  ・・・いやそれでも、聞いただけだけどムカつくな。ドラゴン。  だから、中庭は俺にとっては『外』でそこだけで世界が完結してると言ってもいいくらいなんだけど、魔王の寝室って森に面してるから、ガルが落ちたのは魔物がうじゃうじゃいる所。  死なないだろうし、怪我をすることも無いだろうけど、突然空から魔王が降ってきて魔物の皆さんごめんなさい俺が犯人ですなんて、絶対にしたくないし、もし万が一、勇者が今城の外を歩いていたらビックリするだろうなぁとか思っちゃうのですよ、ディブィ様。 「痴話喧嘩は迷惑にならないようにと何度もお願いしているはずですが!」  木の枝や枯葉を身にまとったガルが怒りに身を包んだディブィに抱えられて帰ってきた。 「だから、俺は悪くねぇってば!」
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