長い長い片想い

1/21
213人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「総務部ってどこなの…?」 もう泣きそう……。 時刻は昼ご飯時、十三時を過ぎたところ。 あたしは入社式までに事務的な手続きを済ませたいという先方……入職予定である病院の総務部を探していた。 おかしい…… 受付で教えてもらった通りの道順で病院内の廊下を進んだのに…… 地域密着型の総合病院。 大学病院みたいなべらぼーに大きな病院に比べると、一回りも二回りも小さいんだろうけど…… それでも十分でかいし広い! しかも、総務部のあるフロアは関係者以外立入禁止。 休憩時だから、誰かしら歩いているだろうと思っていたのだが、予想に反して誰も歩いていない。 人っ子一人いない。 廊下にドアはたくさん並んでいるが、会議室と表示されているばかりで、目的地の総務部が見当たらない。 「どうしよう…。もう一度受付へ戻って、迷惑かもしれないけど案内をお願いしてみようかな…」 ……でも、もうすこしこの辺を探してみたらあるかもしれないし…… そう思い、歩き回ること数分…… 「……ない……、どこにあるの…?……総務部って……」 思わず弱々しく一人つぶやく。 「ここにはないけど……」 唐突に背後から声がした。 少し低めの男の人の声。 一人だと思っていたため、どきっとしつつ、あたしはばっと後ろを振り向いた。 ノーネクタイのワイシャツに黒っぽいズボン。 その上から羽織った少しヨレてる白衣。 二十代か三十代か……。 若若いし感じもしないけど、おじさんという感じもしない。 メガネにもっさりした前髪。 これで無精髭なんて生えていたら、不潔な印象を持ったかもしれないが、髭はキレイに剃られていて、不潔そうな感じはない。 ただ、前髪とメガネのせいか表情がはっきり見えず、第一印象は暗そうな人。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!