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「総務部ってどこなの…?」
もう泣きそう……。
時刻は昼ご飯時、十三時を過ぎたところ。
あたしは入社式までに事務的な手続きを済ませたいという先方……入職予定である病院の総務部を探していた。
おかしい……
受付で教えてもらった通りの道順で病院内の廊下を進んだのに……
地域密着型の総合病院。
大学病院みたいなべらぼーに大きな病院に比べると、一回りも二回りも小さいんだろうけど……
それでも十分でかいし広い!
しかも、総務部のあるフロアは関係者以外立入禁止。
休憩時だから、誰かしら歩いているだろうと思っていたのだが、予想に反して誰も歩いていない。
人っ子一人いない。
廊下にドアはたくさん並んでいるが、会議室と表示されているばかりで、目的地の総務部が見当たらない。
「どうしよう…。もう一度受付へ戻って、迷惑かもしれないけど案内をお願いしてみようかな…」
……でも、もうすこしこの辺を探してみたらあるかもしれないし……
そう思い、歩き回ること数分……
「……ない……、どこにあるの…?……総務部って……」
思わず弱々しく一人つぶやく。
「ここにはないけど……」
唐突に背後から声がした。
少し低めの男の人の声。
一人だと思っていたため、どきっとしつつ、あたしはばっと後ろを振り向いた。
ノーネクタイのワイシャツに黒っぽいズボン。
その上から羽織った少しヨレてる白衣。
二十代か三十代か……。
若若いし感じもしないけど、おじさんという感じもしない。
メガネにもっさりした前髪。
これで無精髭なんて生えていたら、不潔な印象を持ったかもしれないが、髭はキレイに剃られていて、不潔そうな感じはない。
ただ、前髪とメガネのせいか表情がはっきり見えず、第一印象は暗そうな人。
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