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3日目
やはり夢ではない、どこか慣れてしまった檻のパイプをぼんやりと眺め、渡邉は朝を迎えた。どうやら自分が一番最後に起きたのだろう。他の9人は檻の中で各々雑談していた。
住めば都というわけではないが、人間2日も同じ場所にいれば慣れるのだろう。妙に適応する9人を眺めて、渡邉は口元を緩ませた。
「菫ちゃん、ちょっと聞きたいことがあって…。」
そう言って近付いてきたのは、グレーのシャツにレースのスカートを穿いた羽鳥だった。茶髪を振って四つん這いのまま歩み寄ってくる。シャツの襟から見える彼女の乳房は小麦色に膨らんでいる。
「なんであいつって勃起しないのかな。結構私たち相当なことしてると思うんだけど…。」
確かに羽鳥の言うとおりだった。スカトロの趣味はないと言ってはいたが、10人があれだけ自慰行為を繰り広げていく中で田中は何の反応も示さなかった。渡邉は少し考え、言葉を零した。
「勃起不全、とか?」
「じゃああいつの勃起不全を治すために私たち監禁されているってこと…?」
もちろん確証はない。ただそうじゃないと田中が勃起しない理由が見当たらないのだ。
そしてそもそも自分たちと田中はどういう繋がりがあるのだろうか。確かにあの日鍵をかけていた自分を、奴はどうやって連れ出したのか。一度冷静になれば疑問など溢れるほど湧いてくる。渡邉は思わず羽鳥に顔を近付けて言った。
「樹里ちゃんはさ、ここに来る前何してた?」
羽鳥は唇を尖らせて首を傾げた。記憶の中を探るように上を見て言う。
「えーと、午前上がりで、ちょっと疲れ溜まってたから有給とって…そうだ、家に帰る途中でトイレに寄ったんだ。覚えてるのはそこまでかな。」
これは情報収集する必要がありそうだった。ありがとうと礼を言い、渡邉は残り8人が何をしていたのか、聞き込み調査を行った。
結果から言うと、妙な共通点があった。
まず全員に長期に渡る予定が入っているということ。
渡邉は1人旅でハワイへ旅行。羽鳥も長期の休暇を取った。そして他の8人も同じだ。
守下と板垣は部活の合宿、鈴本は趣味でもある海外旅行、長田はサークルのメンバーと旅行、内海は塾の夏期講習に参加、その他は友人と旅行だという。
何故こうも旅行など、長期に渡って家を空けるようなイベントが重なっているのだろうか。偶然の一致にしては人数が多すぎる。
そしてもう1つの共通点は、ここに来る前に必ず1人になっているということ。羽鳥のようにトイレへ行ってから記憶がないという者もいれば、渡邉と同じで家にいたにも関わらず目が覚めたらここにいたという者もいた。
つまりここにいるほとんどの人間が謎の共通点を持ってここに拉致、監禁されている。
何か手掛かりはないだろうか、もう少し探ってみようか、そう思っていた渡邉の目の前で、部屋の扉が開いた。
「お前ら、ルールを破ったな。」
田中は相変わらずの服装でやってきた。革の手袋をつけた右手には見慣れた拳銃が握られている。
「ルールって何ですか?」
そう問いかけた佐野の隣にあるパイプで、けたたましい金属音が鳴り響いた。やはり全員突然の発砲には慣れていない。田中は語気を強めて言った。
「昨晩の飯を食えるのは守下だけだと言ったはずだ。だが守下、全員に弁当を分け与えたな。お前ら共犯だ。」
こちらに向けられた銃口からは薄い煙が伸びている。田中は続けた。
「ペナルティだ。」
そう言って部屋の扉を開けたまま奴は一度出て行った。一体ペナルティとは何だろうか。全く想像がつかないまま、奴は戻ってきた。
いつもの台車とは違う、重たいものが引かれていく音。黒い板の上に真っ赤な罰印の模型が施された装置が檻の前に置かれた。再度天井に向かって発砲した田中はすぐに切り替えて檻の中にいる守下に銃口を向けた。
「守下。まずはお前からだ、抵抗したら容赦なく撃つ。いいか。もちろんお前らのことは殺すつもりなどないが、急所じゃないところくらい把握している。太ももの端でも掠めれば致命傷にはならない、すぐに傷も癒える、ただその時の痛みはお前らにとって計り知れないだろう。もう一度言う。守下、来い。」
どこか冷静な田中の口調は、淡々としている分余計に恐ろしく感じた。先ほどまで流れていた檻の中の平穏は一瞬で危うく、重くなる。スカートの裾をぎゅっと掴み、守下はゆっくりと扉の前に立った。拳銃を守下に向けたまま田中は錠を外し、扉を引いてから素早く守下の腕を引っ張って寄せ、檻の鍵を閉めた。そこで渡邉が見たのは、彼の手付きである。まるで何度もシミュレーションしたかのような動作。こういった経験が既にあるのか、そうなると田中がより恐ろしく感じてしまう。どれだけ足掻こうが、自分たちは監禁されているのだ。その事実を再確認していると、守下は奴の指示で衣服を脱がされていた。ワイシャツとスカートを脱がされ、下着姿になる。といっても一昨日尿を漏らしたこともあってブラジャーのみを着用していた。手を伸ばして足を開き、罰印の形に沿うポージングで、守下は両の手首と足首を拘束された。白とピンクのボーダー柄が施されたブラジャーの中からほんの少しだけ膨らみを見せる乳房が彼女の幼さを際立たせている。スーツの尻ポケットから奴はカッターナイフを取り出し、カチカチと刃をスライドさせた。室内の電球を跳ね返す小さな銀色が伸び、田中はアンダーベルトを切った。丁寧に紐も切り、守下は全裸のまま縛られたのだ。
「お前、オナニーしたことないって嘘だろ。」
守下は頬を紅く染めて顔を背けようとしたが、手足の拘束のせいでうまくいかないのだろう。口の中で何か言葉を沸々とさせたが、田中は聞かなかった。
「今までオナニーしたことない奴があんな手付きで、しかもいくなんて言葉知らねぇだろ普通。正直に言えよ。」
ようやく首の動きが慣れてきたのか、内海は眉上にかかる黒髪を振って否定した。その都度成長途中の乳房が揺れる。
「そうか、嘘つくわけだな。」
田中の陰で見えなかったが、いつも奴が座るパイプ椅子の上に黒い布がかかっていた。それを剥がすと、現れたのは大量の性玩具だった。自分たちが使用したディルドとは少し形が違う、どこか大きい張形。その隣には同じ大きさのローションがあった。遠くからだと見えないが、まだまだ種類は豊富なようだ。
拳銃をポケットに仕舞い、奴はディルドを手に取った。その時にようやく分かったのは、電動であるということ。さらに椅子の上からベルトのようなものを手に取り、慣れた手つきで電動のディルドと組み合わせていく。先端にローションを垂らし、滑りを良くしてからベルトを守下の腰に巻いた。
「今からいくつか質問をする。嘘をついたら、その分またペナルティを課してやる。」
かっちりとベルトが装着される音が聞こえ、電動ディルドの先端が守下の膣口に触れた。今回は媚薬を投与していない、リアルな反応を彼女は口から漏らす。
「うっ、痛いです…。」
いくら潤滑液で滑りを良くしているといっても未経験のものが体内に入るのだ。顔をしかめた守下だったが、田中は止めなかった。
椅子の上から手に取った小型のスイッチを操作し、先端の刺さったディルドが前後に移動を開始した。いたずらな機械音が響く。田中はリモコンを手にしたまま言った。
「初めてオナニーをしたのはいつだ。」
まだ痛みが勝っているのか、守下は顔をしかめたままだった。
「だから、したことないんです。」
そうか、と言って田中はリモコンを操作する。機械音が早まり、余計守下は痛がったが、それは時間の問題だったようだ。呻くような声が徐々に媚を含んでいき、やがて喘ぎ声に変わった。
「本当のことを言え。初めてはいつだ。」
まだ段階があるのか、カチカチとリモコンの音を鳴らしていく。その都度機械音は早まり、やがて粘液が擦れていく音も発生した。
「小学校、5年生…です、あっ。」
その言葉を聞いてうんうんと頷き、田中は椅子の上にある様々な性玩具を手に取った。リモコンを動かす指は止めずに、次の質問を投げかける。
「どんなシチュエーションだった、はっきり言え。」
これではまるでアダルトビデオだ。そんな嫌な雰囲気は続いたまま、守下は奴に従っていった。
「お母さんと、お父さんがしているのを見て、むずむずして…あぁっ…。」
どんどんディルドが加速する。拷問のような光景が目の前で繰り広げられていった。もう手遅れといった感じで、守下は機械にされるがままだった。小麦色の太ももに透明の液体が滴っていく。
「ダメっ、ですぅ。いっちゃう、いっちゃう。」
ぷるぷると彼女の全身が震えているのが分かる。あと少しで絶頂、端から見ても分かる彼女の喘ぎ声は、突然消えた。
「勝手にいこうとするな。まだペナルティは終わっていない。」
そう言ってリモコンをポケットに仕舞い、田中は椅子の上にある性玩具を漁るように手に取った。黒い小さなディルドを手に取り、細いコードが繋がる黒いリモコンを持って、奴は守下の前にしゃがんだ。ペニスバンドの裏に黒いディルドを回していく。奴の背が重なってまるで見えていないが、何が行われているのかは守下の反応で理解できた。
「待って、くださいっ。そこはやめて。」
アナルに入ったであろう張形は、奴が持つ黒いリモコンで上下運動を開始した。粘液の聞こえない、肉の中に機械の棒が差し込まれていく音。守下は首を横に振りながら悶えていた。
「ああっ、2つはダメ。いやぁ…。」
膣に差し込まれたディルドが動きを再開した。両の手でリモコンを操作しながら、田中は言った。
「まだいくなよ、すぐにいったら晩飯は無しだからな。」
彼女が昨日最も多く絶頂を迎えたにも関わらず、田中は彼女の絶頂を制限した。これじゃ本当に拷問だ。
「ひどい…。」
思わず口にした渡邉はようやく彼女から視線を剥がした。しかし田中はそれすらも見ているのだろう、すぐにこちらへ荒い言葉を放った。
「おい、目を逸らすな。共犯なんだからちゃんと見ろ。」
その言葉と共に田中は両のリモコンをカチッと鳴らした。強くなる2本のディルドが守下の体内を二方向から突いていく。最早彼女の喘ぎ声は絶叫に近かった。
「ほら、いってみろ。その情けない顔をこいつらに見せろ。」
彼女は自ら動くことはできない。だからこそ自分から快感を得られない体勢なのだが、それでも守下は小さく腰を動かしていた。薄く焼けた肌が痙攣している。
「待って、おしっこ、出ちゃう、やめて。ダメっ。」
後半は声にならない絶叫を発し、守下は全身を激しく震わせて絶頂を迎えた。魚が陸に打ち上げられたような痙攣は止まることなく、膣に刺さったディルドに進行方向を塞がれた薄い尿が高水圧のホースのように吹き出ていく。檻の中にまで飛び散った飛沫を見て、田中はけたけたと笑った。
「15歳なのに両方から突っ込まれて潮吹いたのか、ませたガキだな。」
田中はリモコンを椅子の上に置いて拳銃を持った。片手でペニスバンド、肛門に刺さったディルドを抜いていく。手首と足首の枷を外してすぐに檻の扉を解錠し、衣服と共に守下を放り込んだ。投げ捨てるかのような態度に、渡邉は心底腹を立ててしまった。しかし奴のペースは変わらない。鍵のかかった檻の中に銃口を向け、田中は言った。
「次。」
それから渡邉の前で次々と拷問が行われていった。名前順ではないためいつ自分の番が来るか怯えてしまう。
守下の次に拷問を受けた鈴本はアナルビーズのみで絶頂を迎えていた。海外のポルノ映画を思わせるような喘ぎ声を発し、何も刺さっていない膣口から愛液を垂らしていく鈴本を見て、田中は再び笑っていた。
その次に拷問を受けたのは長田だった。彼女はおそらくこの中で人一倍気が強く、中盤まで喘ぐことなく罵声を浴びせていた。しかしその威勢も長くは続かず、少し太めの足を開いて、膣を突いていくディルドに負けてしまった。必死に絶頂を否定する長田が、涙を流していた。
その間田中が質問していたのは、本当にアダルトビデオのようなものだった。男性経験はあるか、初体験はいつか、今までに興奮したプレイは何か、どの体位が好きか、オナニーの頻度は、矢継ぎ早の質問に答えていく2人から何度も目を逸らしたくなってしまった。
台座に垂れた長田の愛液を拭き取り、こちらに銃口を向けた田中が言った。
「次は渡邉。お前だ。」
何かを決意するように目を見開き、渡邉は立ち上がった。正直なところ、自分は他の3人よりも乱れないだろう。昨日は媚薬の効果であられもない姿を晒してしまったが、今回は大丈夫だ。自分だけでも奴に歯向かおう。それでいて何かヒントを探ろう、そう覚悟して渡邉は檻から這い出た。
白いレースシャツを脱ぎ、エメラルド色のブラジャーが露わになる。つるりとしたシルク素材の下着のホックを外し、乳房が外に出る。ベージュのスカートを脱ぎ捨て、渡邉は全裸になった。罰印の形に沿って両手を挙げ、両足を開いた。
「早くすれば。拘束するんでしょ。」
「随分と余裕だな。」
田中はそう言って渡邉に近づき、手足の枷を留めた。確かにこれでは身動きは取れない。体の不自由を感じながら、前に立つ田中を睨みつけた。表情どころか顔のパーツさえ分からない真っ黒な布から、奴の機械音声が流れる。
「お前、今までセックスやオナニーで感じたことないだろう。セックスは面倒で、オナニーはストレスを一時的にリセットするもの、そう考えてるんじゃないのか。」
奴の言葉は全て自分に当てはまっていた。ここで躊躇ってはいけない、渡邉は即座に頷いた。どうせ隠していても仕方ないのだ。田中からの拷問を全て無反応で流そう、彼女の決意は変わらなかった。
「つまんない女だな。それじゃ今まで付き合ってきた彼氏が可哀想だな。」
何とでも言えばいい、渡邉は心の中でそう呟いた。もちろん夫婦となればセックスも大事な会話になるだろう。将来のことを見据えた家族計画の一環だ。しかし恋人同士でそれは不必要だ。わざわざ避妊具を付けて快楽だけを求めるのはあまりにも滑稽で、何も魅力を感じない。田中は一息吐くように笑って、彼女の視界から消えた。それと同時に、布が擦れるような音の後に彼女の視界が消えた。
アイマスクをつけられた渡邉の視界は闇一色で、室内の明かりを一切通さない。何が始まるか分からないまま拘束されている、あまりにも屈辱だと渡邉は心の中で呟いた。
その刹那だった。あまりにも鋭く、短い痛みが渡邉の腹部に走った。
「何するの!」
思わず反射的に声を荒げた渡邉だったが、その痛みは絶えず続いた。
おそらく鞭で叩いているのだろう。今まで鞭で叩かれた経験は無いが、その感覚は肌で感じ取れた。鋭く刹那の痛みは腹部から足にかけて、主に下半身に走っていく。しかし耐えられる痛みであるため、渡邉はただ黙ってアイマスクの闇を見続けていた。
しかし、徐々に変化が起こった。叩かれる度に痛みが辛いものではなく、むしろ欲してしまうようになったのだ。何かがおかしい、鞭が体に当たる度に否定しようとしたが、それは田中の言葉で掻き消えてしまった。
「お前、今気持ちいいんだろ。」
ありえない、そう口にしたはずだった。だがその思いとは裏腹に渡邉が漏らしたのは喘ぎ声だった。
「あっ、いや…、そんなの…。」
渡邉の言葉を遮るように鞭が加速していく。認めたくない快感はあまりにも未知数で、それがより刺激的だった。
「濡れてるぞ、渡邉菫は鞭で叩かれて濡れるマゾヒストだったんだな。」
事実を言葉にされて、渡邉は受け入れてしまった。突然鞭が止み、奴はペニスバンドを用意しているようだった。闇の中でそれを理解できたのは、渡邉自身がそうして欲しかったからなのkもしれない。
腰回りに伝わる冷たい革の感触に、思わず声を出してしまう。電動のディルドが渡邉の膣口にねじ込まれ、渡邉は深い快感を味わった。媚薬が無いにも関わらず、昨日に引けを取らない感覚が心地よかった。
単調な機械音と共に上下するディルドが渡邉の膣内を蹂躙していく。そこに加わる鞭の鋭い音、擦れていく膣分泌液。性奴隷になってしまった感覚に、渡邉の絶頂が近付いてきた。
「気持ちいいのか、言葉で言え。」
それでもなお渡邉は口にしたくなかった。妙なプライドがこの快感を邪魔していることも分かっているが、これは本能なのだろう。敵に弱みを見せない、しかしそれも長くは続かない。
「ダメ、気持ちいいですっ、いきそう、いきそう…。」
膣奥をノックする張形から、絶頂の波が全身に訪れる。臀部から駆け巡るような寒気立つ勢いが優しく彼女を包み、渡邉は絶叫した。
「いくっ、いくぅ。あぁっ。」
鞭で叩かれ、電動のディルドで責められたまま、絶頂を迎えた。昨日よりも激しい余韻が痙攣と化して、電撃のように波打つ。言葉と共に余韻を吐き出し、彼女に訪れたのは、絶大な敗北感だった。
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