6日目

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6日目

あの日から毎日のように拷問は続いた。自分の後に続く6人の拷問も凄まじい迫力で、自分もあれだけ喘いでいたのだと思うと、余計心が締め付けられた。鞭だけでなく蝋燭を使用し始めた田中の愛撫に、毎度新たな快感を覚えてしまう。 今自分たちは完全に飼育されている。守下や渡邉のように、あれから全員が新たな快感を知ったのだ。調教されているような雰囲気が檻の中に漂い、段々と全員の口数が減っていった。 檻に放り込まれてから6日目、朝から新たな動きがあった。 静まり返る室内で扉の開く音が鳴る。あれだけ談笑していた10人は黙ったまま扉の方を見た。そこには妙な光景があった。 台車や罰印の模型を引き連れることなく、手ぶらで現れた田中はペニスをむき出しにしていた。それだけではない、ここ数日間でずっと項垂れていた田中の陰茎が、今そそり勃っているのだ。全身が粘液のようなもので濡れた彼のペニスは檻の真上を指している。奴は言った。 「今からお前らを抱いてやる。ここ数日で淫乱になったお前らで、俺を射精させてみろ。」 檻の中がざわめいた。1日目に彼が言った、解放の手段。そのチャンスが今訪れたのだ。 「といっても一気に全員を抱くわけじゃない。今日は2人だ。これを計5日間行う。」 一人当たりの運動量が鍵になってくるのだ。何度こちらが絶頂を迎えようと、田中が一度でも射精してしまえばこちらの勝利である。結束力が薄れていた10人はそれぞれ目を見合わせた。 「まずは宮野。お前からだ。」 真っ白なポロシャツにグレーのスウェットパンツを穿いた宮野真美が渡邉の右隣で立ち上がった。その横顔は異様なほど真剣で、戦場に向かう兵士のようだ。 「全員よく見ておけ、俺をいかせたいならな。」 檻から出て行った宮野の跡を追うように、9人は檻の扉の横に並んだ。その間田中は檻の扉を施錠し、室内の扉の脇に置いてある布団を敷いていた。 「寝ろ。」 顎の先をふくよかな胸に沈め、宮野は仰向けになった。その体勢になると彼女の乳房が重力に負けて垂れているように見えた。覆いかぶさるように上になった田中は、革の手袋をしたまま宮野の乳房を揉んだ。 風船をこねるように優しく、それでいて大きなムーブによって、段々と宮野の真剣な顔つきが溶けていった。ビー玉のような目が閉じ、尖った唇から切ない声が漏れる。 右手で乳房を揉み、奴の左手はスウェットパンツに伸びた。足を開かせると、宮野の膣が布越しに強調される。ふっくらとした小陰唇を、革が撫でていた。 「あっ、やめて…シミになっちゃう…。」 口元を両手で抑えて、宮野は優しい愛撫を受け入れた。壁に刻まれた文字をなぞるような指先は徐々に膣口へねじ込むようなスタイルにも変化する。また、激しく擦る愛撫も加わった。前戯は誰も彼も自由にするのだろう。宮野は言った。 「ねぇ、指入れて…。」 まるで恋人とのセックスかのように、眉尻を下げた宮野は呼吸を荒くしていた。その時に見たのは、田中の妙な反応だ。 「あ、ああ。分かった。」 どこか戸惑っているようにも見える。手袋をつけたままでは指が入らないため、田中は左手を解放させた。男にしては白く、それでいて骨張ったような指先がスウェットパンツを脱がせた。初日に脱糞してから彼女はパンティーを穿いていない。そのため、彼女が言った通り、スウェットパンツに大きなシミが出来ていた。膣に当たっていた箇所から透明な糸が引き、檻越しにも宮野の膣がぐっしょりと濡れているのが分かる。量の多い陰毛には艶が出来ていて、どこか照っているようにも見えた。 「ああっ、あんっ…気持ちいい…。」 田中の細い指が宮野の膣内に侵入し、その度に宮野は切ない喘ぎ声を漏らしていた。太めな白い足がぴくぴくと震え、腰が浮いていく。どうやら宮野はかなり性欲が強いようだった。自らポロシャツを捲り、白い花柄が施された真っ赤なブラジャーが弾けるように露わになる。バランスボールのような乳房が花から溢れてしまいそうで、宮野は自らはだけさせた。少し大きな乳輪の真ん中にぽつんと佇む乳頭は既に硬くなっていた。小さく柔らかな手で自分から揉みしだく。媚を含んだ喘ぎ声とふくよかな肉が漏れていき、まるで田中の指を使ってオナニーしているようだった。 しかし田中も負けじと主役になろうとしている。左手の動きが激しくなり、手のひらで太ももを叩く音が大きくなった。 「やぁっ…いきそう、いっちゃいそう。」 どうやら宮野は腰を動かしているようだった。田中の手と宮野の腰が互いに打ち付けられ、彼女は声にならない声で絶頂に達した。びくんと全身が跳ね、浮いていた腰が布団に沈む。 ポロシャツを脱ぎ、ブラジャーのホックを外した宮野は全裸になって田中自身を迎えた。 「やらしい女だな、お前。」 そう言って田中はペニスを彼女の膣内に運んだ。檻の中にいても温い粘液の中に物体が沈んでいく音が聞こえる。それを掻き消すように、宮野は快感を声に出した。 やはり渡邉の考えは間違いではなかった。獣のようにペニスを迎える宮野は室外へ漏れるほど大きな声を上げて乳房を揺らしている。そのまま隕石となって地球から出て行きそうな勢いだ。自分はここにいる、監禁されている私はここにいるから誰か救いに来て、そう言わんばかりの喘ぎ声が空間を支配し、今この場所の主役は、明らかに宮野だった。舞台に立たされた囚われの姫といった感じだろうか、自分たちは観客なのかもしれない。そう思うほど惹かれる宮野の裸体は芸術作品のようだった。少したるんでいる腹の肉が突かれる度に波打ち、その漣が彼女の表情で飛沫となって弾ける。同性から見てもひどく魅力的だった。 そんな輝きを放つ宮野だったが、田中は射精する気配を見せなかった。地面を壊すほど激しい腰の動きは絶えず続く。いくら性に対して魅力を感じてこなかった渡邉でも分かる、あれだけペニスを刺激すればいずれ射精のタイミングが訪れて、まだ物足りないと思えば男性は腰の動きを止めるはずだ。にも関わらず田中は加速していくばかり。勃起不全でないとしたら射精障害なのか。田中が漏らす声は喘ぎ声ではなく、激しい腰の動きによる疲労からだった。 「また、またいっちゃう、やばい。」 挿入されてから宮野は2回、全身を揺らしながらエクスタシーを得ていた。しかしどうやら今回ばかりは大きな波が来るのだろう。必死にダメ、ダメと口の中で呟きながら仰け反る。 「ああっ、いっく。」 絶叫にも近い声で喘いだ宮野は、背から臀部にかけてを布団から引き剥がし、びくんと痙攣させた。どうやら田中は予想していたのだろう、革の手袋をつけたまま彼女の尻を抑え、ペニスを引き抜いた。 噴水のように潮を吹く彼女は布団にかけることなく、右にずれた田中の脇目掛けて薄い尿を飛ばす。ここに日の光が差せば、虹を作り出せるかもしれない。そう思わせるほどの水量が檻の前で未だ冷気を持つコンクリートを黒く染めた。 「ダメだな、それじゃ俺は射精しない。」 挿入する前と膨らんだペニスの大きさは変わらない。布団から立ち上がり、息を荒くする宮野を見下ろしたまま、奴は言った。その時に渡邉が見たのは、彼の股間である。ファスナーから姿を現わす、そそり勃つペニスではない別の膨らみがポケットの近くに見える。性行為の最中でも拳銃を隠し持っているのか、そう思ったが、何かが違う。この数日間で奴が持つ拳銃の形は記憶していた。ポケットの近くにある膨らみは、あの拳銃より細い。そんな違和感は、息が荒くなった機械音声で途切れた。 「よし、次は、羽鳥。お前だ。」 グレーのノースリーブシャツを着た羽鳥は、レースのスカートをたなびかせるようにして立ち上がった。尾のような黒髪の先からは皮脂の匂いが香る。這うように檻の中へ戻る宮野と入れ替わり、羽鳥は布団の上に立った。吊り上がった目尻から伸びる視線は渡邉を見ている。微かに顎の先を胸元に沈め、羽鳥は田中を見た。 グレーのシャツから浮き彫りになる乳房を右手でしっかりと掴み、蹂躙するように揉みしだいていく。羽鳥の横顔は微動だにしていなかった。意地でも感じない、そんな固い意志すら感じる。 白く華奢な左手が黒いレーススカートに伸びた。踝まで覆う長さの真ん中を掴み、一気にたくし上げる。少し焼けた筋肉質な足が露わになった。ここ数日間パンティーを穿いていないため、膨らんだ太ももの先にある結合部に陰毛が乱れるように咲いていた。 秘部の中に咲く黒い花の内部へ、田中の白い左手が吸い込まれていく。少し触れてもなお、羽鳥は反応を見せなかった。それを見て田中は余裕そうな口調で言う。 「お前ヤリマンだもんな、この程度じゃ反応しないってか?」 陰核に触れているのだろうか。まだ粘液の音は聞こえない。羽鳥は言った。 「だから何?この間初体験の話とか、今までで一番興奮したセックスとか、色々聞いたでしょ。」 淡々とした口調が未だに奴へ歯向かっている。田中は負けじと言葉を発し、指の動きを早めた。 「初体験は中学2年生、場所は学校の多目的トイレ。ガキだからコンドームは持っていなかった。一番興奮したセックスは高校の夏休み、旅行先の海辺、すぐ近くで友人たちが遊んでいる中で岩陰に隠れてセックス、だったか?」 何故逐一記憶しているのだろうか。おそらくその事実を言葉にすることで、羽鳥が興奮したセックスを思い出させて気分を高揚させようとしているのかもしれない。その効果は意外にもすぐ表れた。 「ほら、濡れてきたじゃないか。」 スカートが捲れ、前戯が詳細に見えた。中指の腹で陰核に触れ、やがてその指が膣内に忍び込んだ。 「あっ…。」 思わず声を漏らす羽鳥は、否定するように左手で口元を抑えた。しかし田中は動きと言葉を止めない。 「初めてのオナニーは中学1年生、親とテレビを見ているリビングでパジャマの上から弄った。一番興奮したオナニーは自分がヨガを教えている最中、レギンスの中に仕込んだローターで絶頂、か。随分と淫乱な女だな。口じゃ否定していても体は求めているんだろう。」 セックスというショーを見ている観客の渡邉は確信した。羽鳥樹里は言葉責めに弱い。骨張った彼女の頬が徐々に紅潮していく。大きな唇の端から彼女の喘ぎ声が小さく溢れた。その反応を受けて、言葉数と手の動きが早まる。 「好きな体位は騎乗位、足をついて突き上げられたい。喘ぎ声を我慢するプレイも好きと言っていたが、お前は言葉責めも好きみたいだな。もう愛液が漏れているぞ。」 檻の隙間から見える彼女の太ももの内側には、透明な液体が垂れていた。田中の言うことが正しいのなら、羽鳥は間違いなく一番興奮している。口元を自ら手で抑えて喘ぎ声を発さず、言葉責めを受けているのだ。たったそれだけで、羽鳥が固めていた先ほどまでの決意が大きく揺らぐ、性とは非常に恐ろしいものだった。羽鳥樹里は布団の上で寝転がることなく、田中に負けたのだ。 「もう欲しいんだろ。」 羽鳥のスカートを刺すように反り立ったペニスは、まだ大きさを変えない。口と手の距離感はゼロ、にも関わらず羽鳥の喘ぎ声は薄く漏れていた。 膣内から指を引き抜き、ゴムで腰に張り付くスカートを引き摺り下ろす。筋肉質な足が露わになり、田中と共に布団へ沈んだ。 天井を眺めるペニスの上に跨り、羽鳥は腰を下ろした。横からでも挿入していることがよく分かる。やがて全体を呑み込んだ時、彼女はかすれた声で喘いだ。 たった数十文字の言葉、たった数十秒の接触、たった1本のペニスが1人の女性を淫らにする。性行為は宗教に似ているのかもしれない。その人にとって最適な言葉を投げ掛けるだけで、簡単に洗脳される。数年前にアメリカ合衆国にある宗教団体の教徒たちが宗教の教えと称して集団自殺を行ったという事件があった。全員が自ら死を選ぶことに対して何の疑いも見せない、そんな盲信的な事実が人を狂わせるのだ。それは、目の前で行われているセックスも同じなのだ。 「あっ、ああっ、気持ちいいっ。」 スーツの上で跳ねる羽鳥は両膝に手を付いたまま激しく喘いでいた。荒々しいピストン運動が繰り返され、もう羽鳥の脳内は粉砕されているのだろう。理性を失っている彼女を突き上げながら、田中は機械音声と腰の動きを止めなかった。 「岩陰でもこんな風にされたのか、それで喘ぎ声を我慢してるつもりか?」 会話にならない言葉の数々が室内に溶けていく。最早田中の声は届いていないのだ。 「やばいっ、いく。いっちゃう。ダメっ。」 両膝につけていた手で顔を覆い、羽鳥は恍惚の表情を隠した。それを許さないように、田中は彼女の筋肉質な太ももを掴んだ。両足を布団につけ、羽鳥を浮かせるような体勢になる。それが彼女の限界を越す事となった。 「いくいく、いくっ。」 宙に浮いたような羽鳥は絶頂に達した。何度もというわけではなく、たった一度のオーガズムに全てを込めているようだ。田中の上で全身を震わせながら、魂を吐き出すような体勢で天井を仰いでいた。 それを見て、渡邉は確信した。これは勝てない。今日から始まるセックスの数日間。自分を含めた残りの8人は時間をかけて田中に敗北していくのだろう。2度のセックスで未だに射精しないペニスを檻の中から見て、渡邉はようやく布団から視線を引き剥がした。
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