11日目

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11日目

田中は5日間かけて10人を蹂躙した。1日に2人、濃密なセックスを繰り返していく。それは渡邉自身もそうだった。2日目に選ばれた渡邉は目隠しをされ、後背位の体位で尻を叩かれながら絶頂を迎えた。 その後に指名された鈴本恵美は長時間の愛撫を繰り返され、何度も絶頂の寸前で焦らされた挙句の果てに失神するような絶頂を迎えた。 監禁されてから10日目、10人全員、自分が一番興奮するセックスを覚えてしまったのだ。辱めを受け、恥を見られ、性の快感を知る。この数日間に及ぶ行為は、10人の監禁された女性たちを完全に断絶させた。 渡邉、羽鳥、長田、佐野、鈴本の5人は檻から出るという脱出派。 守下、本田、宮野、板垣、内海の5人は檻から出ずに田中との性行為を続けても良い。というものだった。 「おかしいでしょ、あいつがやってるのは犯罪なんだよ?」 檻の中で対立した2つの派閥は依然として睨み合っていた。声を荒げた長田に対して対抗したのは本田だった。 「とか言ってるけど、夏輝ちゃんだって田中とのセックス楽しんでたじゃん。背面座位でいってたじゃん。」 「それとこれとは違うでしょ?なんであいつの肩持つの?」 今にも掴み合いの喧嘩が始まりそうな雰囲気だった。 「私は今まで誰にも愛されてこなかったの。もちろん田中さんに愛されているとは思っていない。でも体が、そう思っちゃうの。あんたには分からないよ。」 そう叫ぶ本田は4日目に選ばれ、様々な体位で何度も絶頂を迎えていた。確かに彼女の言う通りなのかもしれない。渡邉は檻の外から騎乗位で喘ぐ本田の目から涙が流れているのを見たのだ。しかしそれを許さないように佐野が言う。 「あんたがどう思うかは知らないよ。でも私は外に出たい。中学の時から続けてきた演劇をまだまだやりたい、夢があるの。今のままじゃあいつに邪魔されるままなんだよ、だからここから出たいの。」 佐野は7日目に選ばれ、檻のパイプを掴みながら背面立位で絶頂に達していた。どうやら大勢に見られてするセックスを好むらしい。 「私もそうだよ。演劇やりたいよ、舞台に立ちたいよ。でもそれ以上にあいつとのセックスが気持ちいいんだもん。しょうがないでしょ。」 そう叫ぶ宮野を見て、渡邉は不安を抱いていた。初日に思うことのなかった危機的状況は、このままずっと檻の中に閉じ込められる、そんな暗い未来を予感させてしまう。宮野の援護射撃をするように、守下が叫んだ。 「私はあの人に処女を捧げたんです。セックスがこんなにも良いなんて知らなかった。ただ下品な行為だと思っていたのに、こんなに魅力的なんて、誰も教えてくれなかった。それをあの人は教えてくれたんです。だから私は、あの人にこれからも色々なことを教えて欲しいんです。」 渡邉の後に選ばれた守下はどの体位も激しいまま、数え切れないほど絶頂を迎えていた。盲信ともとれる彼女の言葉に、鈴本は声を荒げた。 「ふざけないで!こんなことは許されない。いくらセックスが気持ち良くたって、いくら色々なことを教えてくれたって、あいつは私たちの自由を奪っているんだよ。自分のことを大切にしてくれる彼氏とか、家族とか、そういう人たちにもあいつは迷惑をかけているの。冷静になって、これは犯罪なんだよ?」 「だから!」 本田の叫び声は、性行為の時よりも大きかった。格子柄のワンピースシャツを揺らし、立ち上がって言った。 「私は誰にも大切にされてないの。付き合った彼氏には重いって言われて浮気されて、それを家族に相談してもあんたが悪いって言われるばかり。重くて何が悪いの?恋愛経験多いなら教えてよ。相手への愛が重くて何がいけないの。軽い愛なんて風が吹いたら飛んでっちゃうでしょ?田中さんは私の重さを受け入れてくれているの。あの人のペニスが私に入る度に、嬉しいの。色々な体位をしても応えてくれる、わがままを受け入れてくれる人が誰にでもいるなんて思わないでよ。私にとっては田中さんが初めての人なの!」 もちろん檻から出たいという考えも、田中とまだまだセックスをしたいという考えも、個人の自由だ。それぞれの思いによって結論が決まる。分かっているからこそ、この状況が自分たちにとって不利なのだと、渡邉は感じていた。顔を背けていた内海がぼそっと口にする。 「皆田中のペニスで何回いったの。それが答えなんじゃないの。」 静まり返る檻の中で、思いが錯綜していた。 「もう、ダメなのかな…。」 そう呟いた渡邉は、自分が涙を流していることに気が付かなかった。もちろん日常に満足しているわけではない。何かしらのストレスを抱えて生きている。学校、バイト、家族、進路。このまま檻の中に居続ければそんなストレスを感じることはないのかもしれない。ただ、そのストレスを愛おしく思ってしまっている自分がいた。快楽だけで人間は満足なのか。 もちろん自分の欲求を受け入れたり、満足させてくれる人は必要だ。本田のように人一倍愛情を欲している人だってこの世には溢れるほどいるだろう。しかしもちろんのことながら、総意ではないのだ。だからこそ人間は日々増え続けるのではないだろうか。全員が同じ意思でいれば楽だろうが、そうじゃないから生きていて楽しいと渡邉は感じている。しかし今の彼女たちにとってその考えは阻害的だった。 「ちょっと待って。やっぱりおかしいよ。」 そう呟いたのは、ずっと黙り込んだままの羽鳥だった。2つの派閥が一斉に彼女を見る。 「おかしいのはこの状況もそうだけど、本当におかしいのは田中だよ。なんであれだけセックスして一度も射精しないの?」 3日目に渡邉と話した内容だった。その時に渡邉が出した仮の答えと同じことを、板垣が言った。 「射精障害って病気があるよ。オナニーでは射精できるけど、セックスになると感覚が違って射精できないって。」 「いや、知ってるよ。でもさ、カウパー腺液も出ないのはおかしくない?」 尿道球腺液。保健の教科書で読んだことがあった。男性が性的興奮を感じた際に尿道から排出される透明な液体。我慢汁という別称が付いている。その液体だけでも妊娠するの可能性がある、精液とは別のものだ。羽鳥は続ける。 「カウパー腺液って、少しでも性的興奮を覚えていたら勃起していなくても出てくるものだよね。でもこの数日間あいつのペニス見ていて、それが全くなかった。仮に射精障害としてもオナニーでの射精は出来るんだから、カウパー腺液が出てこないのはおかしいよ。」 数多くの男性と経験があると語っていた羽鳥の言葉には妙な説得力があった。再び静まり返る檻の中で、渡邉は決意した。 「私もおかしいと思うことがある。檻から出る出ないは一旦置いてさ、試してみない?」 「どういうことですか?」 そう問いかける守下の目を見て、渡邉は言った。 「田中の謎。皆で証明しようよ。もし私の考えが間違っていたら、あなたたちの自由にしていいから。最後に協力しよう。後悔ならいくらでもしていい、ただ、皆で協力しなかったことに対しての後悔は、絶対に嫌だ。」 自分でも言葉に熱がこもっているのが分かる。それが全員に伝わったのだろう。5日間のセックスで断絶した10人が、今一度団結した。
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