知らない大人に電話してはいけないよ?

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 犬、特にこいつには未知なる能力があるように思う。  けたたましく吠える室内飼いのビーグル犬、その名は。 「チロル、落ち着け」  間を置かずに鳴る携帯に、やはりなと思いながら耳に当てる。この犬は、殺しの依頼だけを嗅ぎ分けて吠えるのだ。  表示された番号に、やや顔をしかめながら発声する。 「はい、こちらひまわり堂書店です」  朗らかに華麗なる嘘をつき、分解していたリボルバーから視線を外した。 『あの、どうしても、お願いしたいことが』  気弱そうな女の子の声だった。 「学生さん、知らない大人に電話してはいけないよ?」  この台詞は、合図だ。お前の依頼は本気か、と問うための。 『どうして……学生って』 「その番号、知ってる高校のだ。声の若さを考えたら答えは出る」  私の察知能力はひどい。声の強弱、間の取り方、そこに含まれる感情の波までが情報となり、正確な解を導き出すことができる。  いわゆる、HSPと呼ばれる特殊能力だ。
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