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貴方が居ても居なくても
LINEの既読スルーはいつものこと。未読じゃないだけマシかなんて思いつつ、一応ブロックされていないか、SNSのチェックだけはしてしまうのが悲しいサガだ。でも今更バタバタしたってしょうがない。男の人は付き合う前は必死に口説いて行動してくれるのに、どうして付き合ってしまうと連絡を放棄するのだろうか。「彼女に甘えてるんだよ」って聞こえはいいけれど、要は彼女が手に入ったと甘えて胡座をかいているか、彼女にただ飽きたのか、そのどちらかの割合が多いのだろうなと、年々そう思うようになってきた。もしかしたら、本当に別れたいのかもしれない。でも男の人は別れ話を面倒くさがる。女から話を切り出してくれるのをひたすら待っている、そんな人もいると聞く。女の私は時間の無駄だと思っても簡単には彼氏を切れなくて、モヤモヤした気持ちを抱えながら、今日もスマホを握りしめ、SNSを気にしている。
世の中は、絶賛コロナの真っ最中。自宅待機、外出自粛、これから先もっと事態は深刻になっていくだろう。ある日クビを宣告されるかもしれないし、会社が突然倒産して失業者になるかもしれない。当たり前は当たり前じゃなかったと、私を含め日本人はいつから忘れてしまったのだろう。日本という国は豊かな国と言われていたけど、あれは政府のすり込みだったのではないかとさえ思えてきた。SNSにはいろんな情報が溢れている。どれが真実で、どれが虚偽なのか、正直私には見分けがつかない。それでも今この時もコロナの疑いを持ちながら、検査もできず自宅で高熱と戦っている小さな子供をもつシングルマザーがいる。持病を持つ母と会ってしまったことに後悔している感染した娘がいる。自分の軽率な行動で見ず知らずの人を巻き込んでしまって世の中から追放されそうな学生たちがいる。軽傷は人工呼吸器手前の重い肺炎ということを教えてくれないテレビに映るお偉いさんがいる。今まで楽しんで読んでいたSF小説みたいなお伽話が私のすぐそばまで来てるなんて、誰が想像できていただろう。検査は疑惑のある人でさえ簡単に受けれない。軽い風邪程度の私が受けれることはまずないし、陰性が陽性になるのはタイミングと運でしかないように思える。なので私が保菌者でない確証はないように、彼氏も保菌者でない確証はないのだ。誰が保菌者であるかなんて誰にも分からないし、たとえ誰かから菌をもらっても、恨みっこなしの現実に片足を突っ込んでいる。自分が感染して辛く苦しむだけなら、最悪仕方ないと割り切れる。でも自分が感染したことで、関わりのある人に会社に迷惑をかけ、家族や大切な人に迷惑をかけるその現実を理解すると恐ろしくなるし、ただでさえ連絡がないのに、ますます彼氏には会えなくなる確率だけが上がっていく。
だがしかし、そもそも、私は貴方の「彼女」なのかどうかさえ、最近よく分からなくなってきた。世に言う「彼女」とは、彼氏にとっての絶対的お姫様であり女王様、この世で血の繋がらない唯一無二の大切な存在ではないのだろうか。そんな「彼女」からLINE・電話の連絡があれば、何かしら返信という手段を可及的速やかにとるのが普通ではないのだろうか。だって、自分にとっての大切なお姫様や女王様が連絡を取ろうとしているのに、それを癒しや嬉しいと思ったり、感謝したり、何よりも早く連絡を取りたいと思うのが普通なのではないか。どんなに忙しくても、どんなに辛い立場で踏ん張っていても、彼女のため何かしらの行動を起こすのではないだろうか。つまり、私が声を大にして言いたいことは、男という生き物は行動が全てであり、言葉はどう取り繕うことはできるのである。
それらを踏まえてもう一度私の現実に戻ろう。彼氏は私をお姫様とも女王様とも思っていない。思っていたら、電話の1つ、LINEの1つきっとその日のうちに返している。つまり、彼氏にとって私はただの都合のいい女、果てはセフレにしか思っていないかもしれない。書いていても、悲しくなる。たまには思い出してくれてもいいじゃないか。私以外にも女がいるのは、薄々感じていた。証拠も揃い始めてきている。それでも、彼氏のことが好きというのが致命的なんだろう。もしこの私の豊かな推測が現実ではなかったら、彼氏を信じきれなくて申し訳ないと心から謝ろう。だがしかし、私を疑心暗鬼または自己肯定感低くメンヘラにさせたのは、間違えなくお前だぞと心の中で鬼の形相で強く叫んでやりたい。
貴方が居ても居なくても、私の日常には変わりはない。変わっていくのはコロナの状況が深刻化してくだけ。これからもきっとマスクが足りないだろうし、マスクをしないと外には出歩けないだろう。そして、相変わらず貴方には会えないだろう。
「不要不急な外出はできないから、結婚しようか」とプロポーズされたという人をSNSで見かけた。ほら、やはり、男にとってのお姫様には、こんな時代でもこんな素敵なシンデレラストーリーが待っているのだ。
貴方が居ても居なくても、私は図太く生きていられるだろう。そして婚期はどんどん遠退いていくのだ。きっと私は結婚もせずに、自由気ままに生きることを選択するのだろう。祖母や母に申し訳なく思いつつ、世間の冷たい視線に気が付かないふりをして。
貴方がいても居なくても、私は貴方のことを嫌いにはなれないのだろう。このまま自然消滅になるかもしれない。それも運命だと受け止めるしかない。ただお互い完全に1人になった時、寂しいって思えたら、何かが変わるかもしれない。そんな時、私のことを1番に思い出してくれるといいのにな。そんなことを思いながら、私はまたSNSを眺め、返ってこない返信を待ち続けている。
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