4 声優の私

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電話の向こうの女性は一瞬、月子の声にドキとしたようだったが、用件を伝えて切った。そしてエプロンで手を拭きながら母は娘に奥に入るように勧めた。 こうしてこの夜は家族で食事をしていた。 「お父さん、元気そうだね」 「あ、ああ。なんだかな?お前の声を生で聞くとドキとするな」 娘の声をいつも町中で聞いている父は隣で聞こえてきた声に頬を染めていた。 「そうなの?さ、どうぞおつぎします」 「おっとっと。しかし、お前はすごい人気なんだぞ」 「この男声がでしょ」 自虐ギャクに母はガハハと笑った。月子はそんな母をじっと見ていた。 「良いじゃないか。みんなに喜ばれてるんだよ」 「でもさ。私だってバレてないよね?」 「ああ。だってお前は女だからな。moonは男だって思われてるよ」 「そう」 この夜、久しぶりに自室に入った月子は高校時代の演劇部時の魔女に扮した自分の写真を見ていた。そこには陽平も映っていた。 ……懐かしいな。でも…… 彼と話す勇気が持てない月子は、懐かしい天井のシミを見ながら眠りについたのだった。
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