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5 パーティに参加する私
『それでは新郎新婦の登場です!どうぞ』
故郷の結婚式はそれは派手で親戚が集まる盛大なものだった。新婦の友人である月子は端の席で拍手を送っていた。
「泉美。綺麗だよね」
うん、と月子は同級生の女子にうなづいた。今日の月子はうるさい母の言いつけでワンピースを着てきた。
本当はパンツスーツであったが、母にそれだけはやめてくれと言われ、昔買って着ていなかったシルクのワンピースを着てきたのだった。
そして紹介が済み、場は食事と余興になった。
「いよいよ男子だよ、わ。始まった」
「……」
新郎は一つ上の高校の先輩であったので、月子の知っている男子達が余興で歌い出した。そこには見覚えのある顔があった。
「あれは陽平君だね。部活が一緒だったからかな」
「そ、そうだね」
結構ドキドキした月子はようやく自分達のテーブルに空席があった理由を知った。そして歌い終えた彼らはイエーイとこのテーブルにやってきた。
みなハイタッチをする中、月子もこの波に乗って小さく手を出した。
「お!月子か?久しぶり」
うん、とうなづくと陽平は隣の席に座った。
スーツ姿の彼は凛々しく胸板が厚く以前よりもカッコ良くなっていた。
……マジで?ど、どうしよう……
「月子は何を飲んでいるんだ。これか?」
「は、はい」
「……そうか。じゃ俺もこれで」
嬉しそうな陽平に目を合わせられない月子はビールを注ぎ合ったが、これからの時間を思うと、最高に胸がばくばくしていたのだった。
「お前さ。何の仕事してるの」
「……メディア関係」
「ふーん。俺はさ。今は埼玉勤務になったんだ」
警官になると言っていた彼の日焼けした顔に月子はうんとうなづいていた。
これを見て彼はどこか恥ずかしそうにしていた。
ここに他のメンバーも酒を注ぎに来たので席はめちゃくちゃになっていったので月子はほっとしていた。そんな彼女は担任の先生と話をしたり有意義な時間を過ごしていった。
こうして披露宴は終わり二次会へと移動になった。月子は泉美に挨拶して帰ろうとしていた。
「おい。お前も行くぞ」
「でも、私が行っても」
首を振る月子に陽平は慌てて腕を取った。
「途中で帰って良いから、な?泉美も顔出すんだろう」
「うん。待っててよ月子」
「そこまで言うなら」
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