6 祭りの私

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月子がアナウンスを終えると背後にいた中年女子が肩をトントンと叩いた。 「いい声ね……うっとりしちゃったわ」 「そんな事ないです」 「素敵よ……」 職業病でマイクの前では声優声になってしまう月子であったが、迷子の子供の保護者が現れたのでほっとした。 「あの、つかぬ事をお尋ねしますが、あのさっき放送してくれた男性は?」 「……今は席を外しています」 「そうですか」 残念そうに母は娘を連れて祭りへ戻っていった。 「お疲れ!月子」 「……」 「これさ。落とし物なんだよ。悪いけどアナウンスしてくれ」 「ええ?」 仕方なく月子は放送した。 『落とし物のお知らせです……。ヘビ皮のカバーのスマホを預かっています。心当たりの方は本部まで来て下さい』 この後も自転車の鍵、家の鍵、財布など落とし物がある度に月子はマイクに向かっていた。 しかし会場がなんかざわついてきた。 「なんだ?ちょっと聞いてくるか」 うんとうなづき留守番の月子は、Twitterを見てみた。 そこには『moonがいる!?』とこの会場の写真が写っていた。
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