寝坊した日の朝は。

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「――ねえパパ、これ使っていい?」  いつの間にかテーブルの上には、私が少しずつパンにかけて使っていた少しお高いハチミツが置かれていた。  キッチンの戸棚に隠しておいたはずがいつの間に――と、少し驚いたと同時にため息が出てくる。 「……また買ってくるから好きになさい」 「やった♪ ありがと、パパ」  次女は幸せそうにマーガリンを塗ったてかてか光る食パンの上に、私から強奪したハチミツをたっぷりとかける。  マーガリンを塗った食パンにハチミツ――それは最高の組み合わせだろう。  次女が美味しそうにそれを食べているからか、急に私もお腹が空いてきたし、何よりもハチミツが食べたくなってきた。  六枚切りの食パンをトースターで焼き、その間にマグカップに牛乳を八分目まで注いでレンジで暖める。  しばらく待つと、ちょうどどちらも完成だ。  焼きたての食パンにマーガリンを塗って、次女があり得ないくらい――小さな容器の半分くらい使ったハチミツをそっと垂らしていく。 「いただきます」  手を合わせ、熱々のホットミルクを一口含む。  そして、人が食べているとやけに美味しそうに見えてくる、ハチミツをかけた食パンにかじりつく。  その瞬間、私の口の中は幸せで満たされた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加