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女はグッと唇を噛み締め泣いた。
そして、手にしていたカードキーをサイドボードに置いて部屋を出て行った。
きっとバカな女ではなかった。
泣き散らすことも、罵倒することもなく。
ただグッと全てを飲み込み、涙に変え帰って行った。
俺も女なら、涙の一つも流せたのに……
「先に言っとけよ。言っといてくれた、ちゃんと協力してやったのに」
そうだよ。
言っといてくれりゃー、友達として……
こんな形としてじゃなく協力出来た。
「誰も損してねぇんだ。グダグダ言うな」
違う。
そう言うことじゃねーし、少しは気にしろよ。
「……そうだな」
そうだよな。
お前と俺は同じ気持ちじゃない。
俺とキスしたのだって、ノリだよとか言いそうだしな。
「……帰るわ」
「は?」
引き止める西條の腕を蓮二は振り払った。
「用は済んだんだろう?店も……あるしな」
蓮二はそう言って「あっ、これも返す」とポケットからカードキーを出し、ベットに投げた。
「持ってても良いことねーし」
また、こんな事に巻き込まれるたび、辛くなるのはもうごめんだからな。
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