エピローグ

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エピローグ

 乙姫は太郎を丁重に弔うと、亀に言いました。 「太郎さん、とても素敵な方でしたね。また彼のような方に出会いたいものです」 「そうですな。すぐには手を出さないところも男気を感じましたな」 「ええ、あの時はひさびさにときめいてしまいましたわ。彼がどうしても地上に戻りたいとおっしゃるので、あのような手を取らざるを得ませんでしたけどね」  実は彼に渡した請求書は、もう一度太郎を竜宮城に呼ぶための理由づけに過ぎなかったのです。 「それにしても、はじめは私が取り立てに行くつもりだったのですが、まさか拘束費を請求されるとは思いませんでしたがな」 「ええ……、でも、おかげで話が早く済んでよかったですけどね」 「全くですな。さて、そろそろ次の男を探して来なければなりませんな」 「ですわね。お願いします。今度も彼みたいな方を」  乙姫は、いわば魚たちの母。産まれた時からの宿命で、人間と交わって魚を産まなければなりません。  遣いの亀は、少しでも素敵な人を探すため、再び地上へと旅立つのでした。
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