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夏も終わりに差し掛かった頃、僕の右頬に衝撃が走った。
「ふざけないでよ」
パチン、と響いた乾いた音は衝撃となって僕の右頬を波打った。
恋の稲妻、怒りの衝撃。
僕は断じてふざけてなどいなかった。ましてや罰ゲームでもない。真剣そのものだった。
ただの興味だったものが、多大な好奇心へと生まれ変わり、僕を行動へとみちびいたわけだ。
学校帰りの電車で見かける、ショートヘアーの女の子。キチリと着こなしたセーラー服からは、真面目とエロスが漂っていた。
ホームでは幾度となくスレ違った。その度に、クンと彼女の臭いを嗅いで目で追いかけた。
自然な流れで足元までをチェックし、真っ白な靴下にコクリと頷く。
今日こそ。
意を決し、勇んで彼女の前へと歩み寄る。
「パンツ、見せてください!」
彼女の顔がみるみる紅く染まり、激しく上下に動いた肩は、僕を妄想へと誘った。
「もちろん、いいわよ」
潤んだ瞳の彼女が、僕に近づき耳元で囁く……何てことは起こるハズもなく、彼女の手が振上がり、現実世界へ戻される。振り上げたその手で僕をひっぱたく。
そして、僕の右頬に衝撃が走った。
「ふざけないでよ!」
そう言い残し、走り去る彼女。そんな彼女の後ろ姿をじっと見つめた。
「左利きだったのか……」
僕は今世紀最大のナゾを解きあかしたような、そんな誇りで満ち満ちていた。
周囲の目など気にせず、しばらくぼくはその場で余韻を噛み締めた。
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