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研究室
T大付属病院の朝。外来が始まる午前9:00。
施錠された黒瀬教授の研究室に響く、声。
「あっ・・・ん・・はっ・・・」
「声を抑えろ、聞こえるぞ」
「や・・無理っ・・・あっん・・・」
デスクの上で、教授の黒瀬一樹(くろせかずき)は、裸の上に白衣だけを着た美しい青年を、犯していた。
黒瀬が青年を突き上げるたび、デスクが揺れ、その振動でさらに青年が喘ぐ。狂悦とも苦痛ともとれる表情で、青年は黒瀬の背にしがみついていた。
息も絶え絶えに、青年が教授、と黒瀬を呼んだ。
黒瀬は青年の汗にまみれた顔を乱暴に掴み、唇を塞いだ。舌が唇を割って進入し、青年の舌に執拗に絡みつく。
「黙っていろ」
黒瀬は青年の首筋をざらりと舐め上げ、さらに深く突いた。青年が身体を大きく仰け反らせて達すると、黒瀬はおもむろに身体を引いた。
白衣を左右にだらしなく開いたその上で、荒い息をして裸の青年は黒瀬に湿った視線を向けた。
黒瀬はその瞳を冷たく見下ろしながら、身支度を整えた。ネクタイを締めると、備え付けられたクローゼットから、清潔な白衣を取り出し、袖を通した。
青年は、ゆっくりと身体を起こし、白衣の前を合わせ、かすれた声で言った。
「服・・・返してください」
脚を閉じ、デスクの上で身を縮ませる青年を、黒瀬はまだ情欲に満ちた視線で舐め回した。
クローゼットの奥に、適当に放り込まれたワイシャツやスラックスを引っ張り出し、黒瀬は青年に向かって放り投げた。
「そのままでもいいんじゃないか?」
「・・・何を言ってるんですか」
「白衣は・・・それを着ろ。気づかれるなよ」
「・・・・・」
青年は、身体を覆い隠している汗ばんだ白衣をぎゅっと握りしめた。
白衣には、黒瀬の雄の匂いが染み着いていた。
青年は黒瀬に背中を向け、着替えを始めた。黒瀬の絡みつく視線を感じながら。
青年が淡いブルーのワイシャツの上に白衣を羽織り、黒瀬の方を振り返った瞬間、腰を引き寄せられ、唇を塞がれた。
スラックスの上から、黒瀬の大きな手が青年の脚の付け根をまさぐった。
「・・・あっ・・・」
唇を塞がれたまま、青年は身をよじった。
黒瀬の舌が、青年の口の中で淫らに蠢く。唇が離れると、透明な唾液が糸を引いた。
「も・・・だめです・・・」
「身体は受け入れてるぞ。どっちだ」
「仕事に・・行かないと・・・」
「・・・ふん」
黒瀬は急に、青年を突き放した。青年は、もう一度白衣の襟を正した。
朝の病院は、アナウンスがひっきりなしに響いている。
患者の呼び出しと、業務連絡が代わる代わる館内をこだまする。
『黒瀬教授、黒瀬教授、いらっしゃいましたら第2カンファレンス室へお越しください。繰り返します・・・・』
黒瀬は不機嫌な様子で青年に見向きもせず、教授室のドアを開けた。
そして背を向けたままこう言い放ち、ドアを閉めた。
「では、長谷川くん、また」
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