過去 14年前②

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過去 14年前②

「驚いた?」 「・・・・・・」 「15歳だったからね。後先なんか、何も考えてなかったんだ」 真人はテーブルに両肘をついて、正面に座る慧を見た。 慧は真人が指定したバーにタクシーでかけつけた。真人は、電話で話したときよりもさらに穏やかな様子で、慧を待っていた。 そして慧が必死に謝るのを、大丈夫だから、となだめた。 慧が落ち着くのを待って、自分と理人のことを聞いてほしいと、真人は言った。 「俺は・・・理人が女性が駄目なこと、気がついてたんだ。必死に周りに気づかれないようにしてたけどね。俺をそういう目で見てたのも分かってた。最初は・・・ほんの遊びのつもりだった。・・・俺はね」 「長谷川さ・・・理人さんは・・・」 「理人は、本気だったと思う。もう身体は大人みたいなもんだし・・・高校生だから知識もあったしね。・・・正直、止められなかった」 15歳の真人と理人は、母親や使用人に隠れ、初めてキスをした夜からほとんど毎日のように身体を重ねた。 「女の子とはあったけど・・・男はそれが俺も初めてだった。だから最初は二人で笑いながら、そうじゃないとか違うとか言って楽しんでた。でも、たまたま学校で、俺に絡んできた女子がいて、それを見てた理人に火がついたんだ」       〜〜〜~~~~~~~~~〜〜 『理人・・・理人ってば』 学校から帰るなりベッドにもぐり込み出てこない理人に、真人は鞄を放り投げた。どんなに真人が呼んでも、理人はぴくりとも動かなかった。 『何怒ってんの?』 ベッドに腰掛け、布団の上から触れた真人の腕を、がばっと起き上がった理人は、勢いよく払いのけた。驚いた真人の目の前に、唇を噛みしめた涙目の理人がいた。真人がもう一度手を伸ばした。バシン、と理人はその手を叩き落とした。 『触るなっ!』 『・・・いい加減にしてくれよ』 『・・・っ汚いっ』 『何言ってんだ、お前』 『見たよ。先輩と・・・キスしてたの』 『・・・あれは、向こうが強引に・・・』 『まんざらでもなかったんだろ』 『別になんとも思ってないよ、あんなの』 『何とも思ってない女とよくキスなんかできるな!』 理人が「女」と言ったとき、真人は理人の本心をかいま見た気がした。 ぐちゃぐちゃな泣き顔で、理人は真人のブレザーの胸ぐらを掴んだ。 『なんで・・・っあんな女とっ・・・』 『理人・・・落ち着けよ』 理人は真人をベッドに押し倒し、唇を重ねた。涙が真人の顔にも落ちた。 『真人は俺が好きじゃないの?』 『好き・・・だよ』 『弟として・・・?』 真人が黙っていると、理人は腕の力を緩めて、ベッドから降りた。真人は起きあがることが出来ず、仰向けに寝転がっていた。 真人に背を向けて、理人は声を殺して泣いていた。 少しの時間が過ぎた。理人が、ぼそりと呟いた。 『真人が俺を、弟としてしか見ていないなら・・・もう、やめる』
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