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黒瀬と理人
理人がインターホンを押すとすぐに、ドアが開いて不機嫌な黒瀬が現れた。遅くなりました、と会釈した理人を黒瀬は乱暴に引き込み、鍵をかけた。靴を脱ぐ暇も与えず、黒瀬は理人を抱き寄せ、唇を重ねた。
「同僚といた、と言ったな」
「はい」
「薬剤部か」
「はい、新しく入った・・・」
その言葉を聞いているのかいないのか、黒瀬の手は理人のネクタイを絡め取り、ワイシャツのボタンを開けにかかる。理人がよろけて膝をついたところを、荒々しく組み敷いた。
「聞いてます?」
「・・・うるさい」
はだけたシャツの隙間から、理人の胸を黒瀬の舌が這う。吐息が漏れると、黒瀬が苛ついた声を出した。
「・・・いやらしい身体だな。これだけで声出しやがって」
「教授・・・」
「一樹」
「一樹・・さん・・・あっ・・・」
上半身の服をすべてはぎ取り、黒瀬の手は理人のベルトをもどかしそうに外した。
「一樹さん・・・僕、汗が・・・」
「黙ってろ」
黒瀬は理人の下着の上から、そこに口づけた。布越しの舌の感触に悶えながら、理人は脚を黒瀬の身体に擦りつけた。
黒瀬は笑った。
「我慢できないのか」
「ごめん・・・なさ・・・ひぁっ・・ん・・」
黒瀬に咥えこまれ、理人は腰を浮かせた。黒瀬の身体を挟んだ脚に、力が込もる。じゅぷ、と淫靡な音をたてて、黒瀬は理人を快感に誘った。
よく磨かれたフローリングに、はだけた理人のジャケットとワイシャツが広がっていく。
黒瀬は身体を震わせて堪える理人から、口を離した。
膝でひっかかっていたスラックスを乱暴に抜き取り、下着だけになった理人を抱き上げた。大股でバスルームへ運び、どさりと理人を降ろすと、服を脱いだ。
シャワーをひねり、もうもうと上がる湯煙の中に理人を立たせ、唇を塞いだ。顎を掴み、鋭い視線で理人を射る。
「名前は」
「え・・っ・・」
「同僚の名前だ」
「はぎ・・の・・・」
「・・・どうせまた、余計な色気振りまいて、ひっかけたんだろう」
「ちが・・い・・ますっ・・・」
「淫乱が」
黒瀬は理人の両手を壁に付かせた。
潤んだ瞳で振り返る横顔を睨みつけながら、肉を割って、黒瀬は理人の中に挿入った。まもなく達しようとして拍動する理人のそれを強く握ったまま。
「んん・・あっ・・」
「反省・・・しろっ・・・」
「ごめ・・なさい・・・あっん・・・」
シャワーの音と、肉が擦れ合う音が入り混じり、理人はみるみるうちに高まっていく。
「一樹さ・・・離してっ・・前・・もうっ・・・」
「だめだ」
「嫌ぁ・・・んっ・・・んうっ・・」
「・・・っそんな声・・・出すなっ・・」
黒瀬の身体がぶるっと震えたのと、握られた手を離されて、理人が高い声を上げて達したのが、ほぼ同時だった。
壁に手をついたまま荒い息をしている理人を振り向かせ、黒瀬はその口の中に指を入れた。
黒瀬の節くれ立った指を、理人はおとなしく受け入れて、目を閉じた。
大の男が二人並んでもなお余る大きなベッドに、理人はうつ伏せに眠り込んでいた。
ベッドサイドのライトの小さな灯りだけを残して、黒瀬はベッドに近づいた。
黒瀬はその背中に点々と残るキスマークと、自分がつけた爪の痕をそっと撫でた。眠ったまま、理人は少しだけ、くすぐったそうに寝返りを打った。
理人の隣に滑り込み、後ろから抱きしめるとその腕を無意識に掴まれ、黒瀬は首筋に優しくキスを落とした。そして自分も目を閉じた。
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