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「ねぇ、桜介。
あんたも時宗君にお礼を言いなさいよ。
私たちは一緒に危機を乗り越えた仲間でしょ。
つまらない意地は張らないでよね」
愛理にそう言われて、桜介は時宗に目を向けた。
(もちろんオレは時宗に感謝している。
舞ちゃんの夢を救えたのも時宗のおかげだし、ピンチのときにオレを助けてくれたのも時宗だ。
そんな時宗は本当にカッコいいよ。
オレなんかよりもずっと……)
桜介は心の中でそう思っていたが、口をついて出てくる言葉は本心とは違っていた。
「時宗は仲間かもしれねぇけど、オレは時宗に負けたくねぇし、負けねぇからな!
時宗がイケメンで背が高くて、モテモテでも、絶対に負けねぇからな!」
時宗は自分の理想であり、憧れだと桜介は心の中で思っていた。
もしも自分が時宗になれたならって、桜介は今まで何度も想像していた。
今の自分が時宗に勝てないことは自分が一番わかっていた。
でも、いつかは自分も時宗と同じくらいに高いところに行ってみたい。
桜介は誰にも言わずにそんな思いを胸に秘めていた。
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