サイトによって短編の定義って異なる?

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サイトによって短編の定義って異なる?

     このエッセイの「はじめに ――素人作家としての自己紹介――」の中で書いた、 > 読んでいた文庫本に挟まっていたチラシ。そこで短編小説の公募を知って、応募してみたのです。確か、原稿用紙80枚という規定だった気がします。  という記述。  この点に関して複数のページコメントをいただいたので、ふと気になりました。  エブリスタの皆様にとって、短編とはどれくらいの長さの作品なのだろう、と。  実は、私の『原稿用紙80枚』という書き方が悪かったのではないか、という反省もあるのですよ。スマホ画面の1ページを『1枚』と誤解されるような、そんな紛らわしさがあったのではないか、と。  一応補足しておきますと、ここで言う『原稿用紙』は400字詰め原稿用紙なので、80枚は32,000文字ということになります。ただし原稿用紙に記す場合、400文字びっしり書くわけではなく、改行などで空白は出来ますから……。  試しに、自分の作品を一つ、400字詰め原稿用紙のフォーマットに直して、最初の80ページまでの文字数をカウントしてみました。すると、25,355文字になりました。まあ、そんなものでしょう。  とはいえ『2万5千文字』というのは、私の思う『短編』よりは長いのですよね。この辺りは、一般の小説の公募に応募するのとWEB小説を執筆するのと、やはり意識が違ってくるのでしょう。  少し『短編』というテーマからは話が逸れますが。  よくWEBでは「文庫本一冊が、だいたい10万文字」なんて話がありますよね。実際、コンテストの応募要項を見ても、それくらいの長さを要求されています。10万文字以上とか、少し短めにして8万文字以上とか。上限が設定されている場合には、十数万文字くらいまででしょう。  しかし。  これって、WEBによくあるラノベ的な長編限定のはず。字の大きさや文字数が若者向けで、挿絵ページが入ること前提。そういう特殊な『文庫本』に限った話です。  ……そんなことを考えるようになったのは、以前にツイッターでカクヨムユーザーの(かた)と「一般的な文庫本の文字数って、どれくらいなのだろう?」という話になったからでした。  その(かた)の疑問は、元々「岩波文庫だと10万文字って、どれくらいのページ数?」だったのですが、私の手元には岩波文庫は一冊もなかったので。  話を「一般的な文庫本」にすり替えて、本箱に大量に入っていた角川文庫で調べてみました。もちろん、自分自身で本の文字数をカウントするのは大変ですから、古い小説作品――いわゆる青空文庫に収録されている作品――の文字数が記載されているサイトを利用しました。  とりあえず。  青空文庫に入っていて、自分の手元に文庫本がある作品。パッと目についたのが坂口安吾の『復員殺人事件』でした。文字数記載サイトによれば、105,755文字。私が持っていた本は、昔の一般的な文庫本の厚さでしたが、解説含まず303ページ。 「あれ? ラノベではなく大人向けの小説でも、10万文字って適度な基準なのか……」  と思ったのですが。  これが、ちょっとした勘違い。『復員殺人事件』は坂口安吾の遺作であり、原作は未完なのですよね。だから文庫本バージョンは、別人が書き足した作品であり、文字数記載サイトの『105,755文字』というのは、188ページまでの内容でした。  つまり。  10万文字は200ページ足らずに過ぎず、普通の文庫本にしては、どう見ても薄い。これが、この時、調べてわかったことでした。  それから二ヶ月。  今度は、自分のWEB小説の話です。  約34万文字、全45話、2章構成の作品。その第一章の終わりまで読んでくださった(かた)から、「これで10万文字くらいでしょうし、ここまでにしておきます」というような感想をいただきました。  私も第一章ラストは「本にするならば、ここまでが一冊!」という意識で書いており、そこで作品タイトルも見事に回収する形にしていたのですが……。  実はこれ、10万文字どころか、約17万文字。第二章の方が話数が多いから紛らわしいだけで、第一章も第二章も、同じくらいのボリュームだったのです。  そこで、ふと考えてしまいました。 「読者が『10万文字』のつもりで読んでしまう、17万文字。これって、ラノベ一冊にしては長すぎるだろうけれど、普通の小説で考えたら、むしろ適正なのではないだろうか」  再び『青空文庫の文字数が記載されているサイト』の出番です。今度は逆に、17万文字くらいの作品を探してみました。  パッと目についたのが、夏目漱石の『こころ』と『三四郎』で、どちらも約18万字。手元にはありませんが、中学生か高校生の時に読んで「一般的な小説の長さだった」という印象。  手元にある文庫本として見つけたのは、江戸川乱歩の『悪魔の紋章』。これが約16万字でした。  というわけで。  その時の自分の作品が「第一章も第二章も、だいたい文庫本一冊くらいの文章量」と確認できたと同時に。  WEB小説やラノベの『文庫本一冊』は普通の小説の『文庫本一冊』よりも遥かに短い、と再認識したのでした。  ここで『短編』の話に戻します。  以上のように、WEB小説の文字数は一般的な小説より短めだと考えると、昔の公募に応募した短編が現在のWEB基準の短編より長いのも、当たり前なのですよね。  でも。  そもそも『WEB基準の短編』って、どれくらいなのでしょう?  私の頭の中では、漠然と「2万文字までが短編、8万文字までが中編、それ以上が長編」と思っているのですが……。 「はて? 何故そう思うようになったのだろう?」  少し考えたら、わかりました。おそらく、私が「カクヨム」メインで活動してきたからでしょう。小説検索画面には、このような項目がありますから。         097a6dc5-e30f-4307-9308-ed10c1fedfcf        では、次の疑問。  これって、他の小説投稿サイトでも同様なのでしょうか?  私が現在のような小説投稿を始めたサイトであるはずの「小説家になろう」では……。        7ab2e90e-e89b-4be0-8a9f-2eee62535910         いやはや。  もちろん文字数で作品を絞り込めますが、でも、それは『短編』ではない。「小説家になろう」では、そもそも投稿形式で一話限りの作品を『短編』と呼んでいます。短い作品のことではないのですよねえ。  小説投稿サイトとしては「小説家になろう」が最大手だと思いますが……。そこがこのような『短編』の定義をしているということは、他もそれに追従しているのでしょうか? 私が慣れている「カクヨム」が異端?  では、次に「セルバンテス」を見てみましょう。なお、この機会についでに書いておきますが、「セルバンテス」は5月末で閉鎖されることが、4月13日に告知されています。        8c07cca6-047f-407e-a70b-c98d92f9d2b8         2万文字未満を『短編』としており、中編と長編の境目が8万文字になる点も含めて、「カクヨム」と同じです。  そして、最後にエブリスタ。  私はエブリスタを使い始めてすぐ、以下のようなURLを自分のPCでブックマークしました。 https://estar.jp/novels?finished=1&max_character=2000&min_character=1000&sort=modified_at_desc&writing=0&tag_only=0&ex_r18=0&ex_paused=0&ex_ticket=0&is_book_p=0&awarded=0&in_selection=0&published=&characterLengthOption=manual  何かと言うと、1,000文字から2,000文字の完結済み作品の検索。適当に新しい作品を読む時、これくらいの長さのものが読みやすい、と感じているので。  このように、いったん好みの検索条件を設定してしまった以上、なかなか『検索画面』を見る機会はないのですが……。  改めて確認してみると。             4b5f0dee-d244-4df7-8c4e-44ccf0b155f2         エブリスタでも、2万文字までが短編ですね。『以下』『未満』といった違いはありますが、そこは些細な点でしょう。8万文字以上を長編とするのも、「カクヨム」「セルバンテス」と同じ。『中編』という分類がないことだけが、違いと言えるでしょうか。  以上のように。  だいたいどこでも、短編と言えば2万文字まで、長編と言えば8万文字以上。例外は「小説家になろう」。  ……そんな感じになりました。あくまでも、私が使っている小説投稿サイトに限った話ですが。  他の大手サイトの情報ありましたら、どうぞページコメントで書き込んでください。  エブリスタはスマホ向けだから、他より『短編』も短いかもしれない……。そんな心配もあったのですが、他と一緒みたいなので、個人的にはホッとしています。    
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