続・はじめに ――選ばれたのはエブリスタでした――

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続・はじめに ――選ばれたのはエブリスタでした――

     前回予告したように。  今回は、なぜ私が「小説家になろう」「カクヨム」「セルバンテス」「エブリスタ」に登録したのか、その理由について書いていきたいと思います。  一応サイトごとの違いにも触れるでしょうが、まだ自己紹介の続きのようなものかもしれません。  まずは「小説家になろう」。これは単純に、当時の私が、それしか小説投稿サイトを知らなかったから。  そして半年使い続けた頃、つまり昨年の春。  インターネットの何かの記事で知ったのが「カクヨム」という小説投稿サイトでした。好意的な記事ではなく、角川系列である「カクヨム」出身の小説家の(かた)が不遇な目に遭っている、という話だった気がします。小説家デビューを志すなら角川は避けた方がいいよ、みたいな。  ですから、普通ならば、そこで「カクヨム」に登録する気など出てこないはずなのですが……。まあ、私には『小説家デビュー』なんて縁のない話ですからね。全くデビューしたくないわけではありませんし、WEB経由のコンテスト応募もしていますが、現実的な目的としては受賞ではなく、審査員という一人の読者が得られたらいい、というレベル。  とりあえず、野次馬根性で話を見ていくうちに、初めて知りました。たくさんの小説投稿サイトの存在とか、同じ作品を複数の小説投稿サイトに掲載することとか。  言われてみれば「小説家になろう」でも、あらすじ欄に『この作品は〇〇にも投稿しています』みたいな但し書きを見かけたことがある気がする。でも、そういう作品に対して私は「何やってんの、これ?」と冷ややかな視線を送っていたのです。  その頃の私には、重複投稿が裏切り行為のように思えていたのですね。大学時代にサークルを掛け持ちしていたという別の趣味の思い出も関係するのですが、それだけではなく、二次創作活動の経験が大きな理由でしょう。  ほら、二次創作小説の投稿は、個人が運営しておられる投稿サイトでしたから。趣味でやっておられる場所に掲載させていただく、その作品を他にも投稿するなんて、言語道断です。……と思っていたわけです。  しかし。  現在のいわゆる小説投稿サイトでは、少し事情が違います。「小説家になろう」にしろ「カクヨム」にしろ、れっきとした企業が運営している小説投稿サイト。たとえ利用料は無料だとしても、企業側にも利益があるからこそ運営されているはずです。  具体的には何が利益になるのか、それを私が考えようとしても『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』なのですが……。素人考えでも、投稿小説の一部――人気作品――を商業利用するため、というのは想像できます。そのためには、どこの小説投稿サイトでも、なるべく多くの作品を掲載したいわけで、他サイトとの重複投稿も喜んで迎え入れる。それが、小説投稿サイトの主流……。  ここまで理解した時点で、ならば私も、と思ったようです。  そして「小説家になろう」とは違って出版社直轄であるという「カクヨム」。『出版社直轄』であるがゆえに、それなりのメリットもデメリットもあるのかもしれませんが……。  とりあえず、あくまでも「カクヨム」登録のメイン目的は、ただ作品披露の場を増やしたい、というだけ。「小説家になろう」で書いた作品を他にも掲載することで読者を増やしたい、という量的な話。この時点では、質的なことは一切考えていませんでした。  そして実際に「カクヨム」を使い始めると、読者層の違いというものをヒシヒシと感じるようになります。  といっても、あくまでも『私の場合』ですので、作風が違う方々の参考にはならないかもしれませんが……。  少なくとも、私が感じた限りでは。  まず単純なPVに関しては、「小説家になろう」の方が明らかに多い。しかし物語を最後まで読んでくださる方々の数は、おそらく「カクヨム」の方が多いでしょうし、感想をくださる方々の数に至っては、比べるまでもないくらいに「カクヨム」の方が多い。  しかも、その『感想』の中身。作品そのものを改善したり、今後の執筆活動に活かしたりできそうな有意義なアドバイスは、圧倒的に「カクヨム」の方が多い。  まあ何故かというと単純に、読者の中で「小説家になろう」は読み手の割合が高くて「カクヨム」は書き手の割合が高いから。もちろん「小説家になろう」だって、書き手の読者もおられるのでしょうが、「カクヨム」と比較したら少ない、と言わざるを得ない。その分、全体の読者の総数は多くなるのでしょうが、でも書き手の感想は少なくなる。  もしかすると、読み手目線の方が耳障りの良い感想が多くなるのかもしれませんが……。でも、読み手目線でも、作品の欠点を指摘するコメントはありますからね。中には「そこは枝葉末節であって、そこにこだわるのは作品のテーマ自体がブレてしまう」と思えるようなコメントも出てくる。……というより、そう感じてしまうコメントを「小説家になろう」では何度ももらったけれど「カクヨム」ではほとんどないからこそ、読み手・書き手などと想像してしまうわけですが。  ……と、こうして書くと「カクヨム」賛美みたいに思われるかもしれません。しかし、先ほども述べたように、あくまでも『私の場合』です。少し、私の作風と絡んだ話です。  そもそも私の小説って、本来はWEB掲載に向いていないのだと思います。  前回述べたように、私の原点は推理小説。だからファンタジー長編を書く場合、それどころかホラー短編や恋愛短編においても、伏線や起承転結を重視した書き方になっているはず。結末が全てであり、最後まで読めば面白いかもしれないけれど、途中で脱落する読者も多いであろう、という作品です。  そこを途中脱落させないのが作者の腕なのでしょうし、私がプロならば、そのために努力するべきなのでしょうが、私はアマチュア。私にとっての一番の読者は、私自身。むしろ途中が面白くても最後がつまらなかったら「なんだ、これ!」と激怒するタイプの読者です。  だから「いつ完結するかわからないくらい、ダラダラと続く連載作品」は大嫌いなのですよ。この時点で、WEB小説を書くのが向いていないどころか、読むのすら向いていないのですけどね。いわゆるWEBの人気作品、ランキング上位の作品って、連載を続けていることが必須条件でしょうから。  こんな偏屈な私の作品でも、それなりに読んでいただけるのが「カクヨム」という小説投稿サイトなわけで……。作品更新こそ最大の作品アピールとなる「小説家になろう」では、読んでもらえないのも当然です。  なお、ここまで見て「自分も似たような作風だから、カクヨムにも登録してみようかな」と思われる方々が出てくるといけないので、一応。  いくら「カクヨム」でも、作品の存在を知ってもらえなければ読んでもらえません。エブリスタならばトピックで宣伝することになるのでしょうが、これに相当するのが「カクヨム」では自主企画。  ただし「カクヨム」の自主企画が違うところは、作品投稿時に参加を勧められる、という点。エブリスタでいうところの作品情報、つまり作品タイトルとかあらすじとかを記入するページの時点で『開催中の自主企画イベントに最大3件まで参加できます』という形で、自主企画参加を促されます。それだけ公式的なので、作品ページの目次の下には、参加した自主企画イベントの一覧も表示されるくらい。だから、ある一つの作品と同じ自主企画に参加した作品を探す、という形で「同じようなテーマの、別作家の作品」を探すことも容易。宣伝効果も高い。  ……というシステムですから、おそらくエブリスタの掲示板とは少し違う、と思っています。この『自主企画』こそが「カクヨム」の最大の特徴、と私は認識しており、サイト間の特徴を比較するようなエッセイで「カクヨム」が出てくるのに『自主企画』という言葉が出てこなかったら「ああ、このエッセイの作者は、サイトに登録したとしても実質的には利用しないまま、わかった気になってエッセイを書いているのだな」と判別してしまうくらいです。  少しだけ話を戻して。  二つのサイトを比較して、読む読まれないの話。  長編とは別に、短編に限って見ても、やはり「小説家になろう」より「カクヨム」の方が読まれやすい、と感じています。これも元を辿れば、読み手が読者なのか書き手が読者なのか、という点に行き着くわけですが。  ほら、自分も小説を書いていたら、というよりも書くことがメインであったら、それほどたくさん長編は読めないじゃないですか。でも短編ならば簡単に読める。だから書き手は必然的に長編よりも短編を読むようになるのではないか、というのが私の想像です。  少なくとも、私自身は、そうですね。何かの企画でもない限り、なかなか長編を読もう、という気はしない。そもそも上述のような結末至上主義ですから、連載中の長編なんて、どうして読む気になれましょう?  まあ、私自身は極端な例だとしても。  以前に「カクヨム」で「短編をいくつか読んだら面白かったので、長編も読んでみました」いう感想をいただいたこともありますから、やはり書き手には短編が好まれる傾向なのではないか、と思っています。  ……と、この辺りの話でウダウダしていると、いつまで経っても進まないので、少し先へ行きましょう。  ともかく、こんな感じで、「カクヨム」登録時の魂胆は消えてしまい、もう「小説家になろう」ではなく「カクヨム」が執筆活動のメインになってしまった私。ただしコンテストに関しては「カクヨム」より「小説家になろう」の方が圧倒的に優れている、と感じたので、「小説家になろう」を辞めてしまう気はありませんでした。秋冬のコンテストの時期には「小説家になろう」に戻るけれど、それまで「カクヨム」メインで遊ぼう、などと渡り鳥のようなことを考えていました。  そして「カクヨム」を使い始めて数ヶ月後、つまり「小説家になろう」に登録して『烏川 ハル』としてスタートして約一年後。今度は「セルバンテス」という小説投稿サイトにも登録してみたのです。  まずきっかけとなったのは、他の「カクヨム」ユーザーの方々との連絡のためにツイッターに登録した、という出来事。そして私がツイッターを使い始めた頃、まるで広告のように「セルバンテス」のツイートが頻繁に流れてきました。  その時まで聞いたこともないサイトだったので、最初は「何これ?」状態。検索して調べてみると、比較的新興のサイトらしい。  それはそれで興味深かったのですが、解説記事の中で一番「おっ」と思ったのが、そこは大人向けの小説投稿サイトだ、という話。  正直、「小説家になろう」より「カクヨム」の方が利用者の年齢層は上だと感じていましたし、もしそれが誤っているとしても、少なくとも私の作品を面白がってくださるのは、そういう年齢層だろう、と実感していました。  そして、もはや「誰でもいいから読んでほしい」よりも「面白いと思ってくださる方々に読んでほしい」と考えていた私。量より質、みたいな話です。  サイトによって読者層は違う、というのは「小説家になろう」と「カクヨム」で思い知りましたし、もしも「カクヨム」以上に受け入れてもらえるサイトがあるならば、とりあえず登録してみよう、と思ったわけです。  それで実際に登録してみたのですが……。  どうも私が想定していた「大人向け」とは少し違うらしい。そもそも運営母体が講談社のラノベレーベル。  いや、私だってラノベっぽいファンタジーは書いていますよ。例えば昨年度の「ファミ通文庫大賞」で一次選考を通過した長編だってあるくらいです(これは2020年4月現在エブリスタでも連載中! ……と、少しだけ宣伝しておきます)。  でもねえ、違うのですよ、私が求めていたものは。子供の感性を持ったままの大人が書くラノベじゃなくて、古臭い感性で書くラノベを受け入れてもらえる場所が欲しかったわけで……。  まあ、そんな感じで当初の目的とは異なってしまいましたが。  ちょうど私が登録した9月から、半月ごとに運営側がテーマを決めて毎回数作品ずつ紹介する、というイベントが行われていまして。そこで短編を一つピックアップしていただけたので、以降、毎回楽しみに参加していたのですが……。  11月頭の「次回のテーマはお仕事です。次回11/18をお楽しみに!」という告知以降、『運営からのお知らせ』コーナーには何も掲載されず、次の告知は3月でした。ツイッターの方では担当者の事情で、みたいな公式ツイートがあったようですが、それがサイト側には掲載されないのが「セルバンテス」の仕様だったのでしょうね。  個人的には不親切と思ってしまいましたが、まあ無料で使わせていただいている小説投稿サイトである以上、利用者が多くを求めすぎてはいけないのだろう、と勉強になりました。  登録時の目的も楽しみにしているイベントもなくなってしまった以上、もう「セルバンテス」を使う意味はなく、かといって、せっかく登録したのを退会するのももったいないので、絶賛放置中です。  ……と、こんな経緯で、いよいよエブリスタ。  登録したのは今年の3月ですが、サイトの存在自体は、前々から知っていました。ここは「カクヨム」や「セルバンテス」登録時の事情とは、大きく違う点です。  もともと「カクヨム」掲載作品を読んでいる時に『この作品はエブリスタにも投稿しています』を何度か見かけて、エブリスタは恋愛小説と女性読者のためのサイト、というイメージを抱いていました。  実際にサイトを訪れるきっかけとなったのは、秋に『カクヨム』で開いた自主企画。一次選考通過二次選考落選の小説を集める、という企画でした。たとえ下読み審査員であってもきちんと第三者に読まれた上で選ばれたものを集めたい、という企画だったので、『ただし読者選考のあるコンテストを除く』という条件をつけており、企画主である私は、参加作品それぞれが応募したコンテストを逐一確認することになりました。  その際、エブリスタ小説大賞のものがいくつかあったのですね。それで、こちらの過去のコンテストページを見に来た、というのが、私のエブリスタ初訪問だったはず。  だから、この時は、エブリスタ内の小説を読んだりはしませんでしたが……。とはいえ、既に「カクヨム」の方で「エブリスタにも掲載されている作品」をいくつも読んだ後でしたからね。上述のような『恋愛小説と女性読者のためのサイト』という印象は、既に固まっていたのです。  私自身は女性ではありませんし、執筆のメインは恋愛小説ではないのですが……。「カクヨム」の方では、いくつか恋愛もの短編も書いていました。「これ、エブリスタならば、もっと読んでもらえるのではないだろうか?」という考えが頭に浮かびます。  それに加えて。  この春、ツイッターで見かけたツイート。「カクヨム」にもエブリスタにも登録しておられるユーザーの、コンテストに関する話。大きなコンテストではなく小さなコンテスト関連でしたが、そこに興味を持って、改めてエブリスタを見に来ると、どうやら小さなコンテストは頻繁に行われているらしい。これならば「既存の恋愛短編を披露する」だけでなく「新たにコンテスト向けに短編執筆する場」としても面白そう……。  こうして、エブリスタに登録したので。  以前の「カクヨム」や「セルバンテス」とは違います。ましてや、全く何も知らなかった頃の「小説家になろう」登録とも違います。  今度は、どういう作品が掲載されているのか、いくつか読んだ上で、新しく登録して活動の場を広げることにしたのでした。  そして、まず登録の時点で驚いたことがあるのですが……。  もう十分に長くなったので、それは次回にしましょう。    
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