はじめに ――素人作家としての自己紹介――

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はじめに ――素人作家としての自己紹介――

 はじめまして。  このエッセイは、エブリスタに登録してまだ一ヶ月という初心者の私が、色々と勝手な意見を述べていくものなのですが……。  タイトルで他サイトとの比較を明言している以上、まずは自己紹介をしておきたいと思います。どういう小説投稿サイトを、どれくらいの期間、どれくらい使い込んできたか。それがわからないと『比較』の前提にならないでしょうから。  というわけで、今回は私の「素人作家としての自己紹介」です。  さて、皆様。  皆様は、素人作家としての自己紹介と言われたら、どこから始めます? 初めてのネット投稿あたりからでしょうか?  物心ついた頃から既にインターネットが存在していた世代ならば、それでいいのでしょうが……。いや、このエッセイの趣旨としては、それでいいのかもしれないですけど。  せっかくの自己紹介ですから、もう少し前から始めてみたいと思います。  小学生の頃、私は、横溝正史や江戸川乱歩の小説が好きでした。当時の角川文庫から出版されていた横溝作品・乱歩作品は、小学生のうちに全て読んでしまったくらいです。子供には意味のわかない表現や描写もありましたけど。  そして、自分もこういう物語を書きたいなあ、と思ったものです。夢は推理作家、ですね。  とはいえ、実際に書き始める意欲はありませんでした。せいぜい、国語の時間に「物語を書いてみましょう!」という課題を与えられて、他の子供たちがほのぼのした童話みたいなものを提出する中、『飛行場の殺人』なんてタイトルのものを書く程度。  なので、この辺は、まだ「素人作家のスタート」とは言えません。小学生の頃は、まだ自分では書いていないくせに、いや書いていないからこそ『書く』ということの実態がわからずに、「いつか書きさえすれば、傑作が書けるに違いない」と思い込んでいる子供でした。  初めて『小説』を書いたのは、十代後半の時。もう高校を卒業して、予備校に通う準備をしていた頃だと思います。ええ、大学に入学する準備を、ではなく『予備校に通う準備を』していた頃です。  読んでいた文庫本に挟まっていたチラシ。そこで短編小説の公募を知って、応募してみたのです。確か、原稿用紙80枚という規定だった気がします。  まだインターネットなんて存在しなかった、あるいは一般的ではなかった時代です。その数年前のパソコン雑誌の裏表紙で、モデム付きパソコンは大々的に広告されていましたから、既にパソコン通信はありましたけどね。現在のインターネットとは違って、あくまで一部のパソコンオタクのためだけ、という感じだったと思います。  さて。  そういう時代だったので、原稿用紙に手書きで応募したわけですが……。ここで、子供だった私は現実を知ることになりました。いや、一応は十代後半だったのですが、精神年齢としては本当に幼稚であり、それこそ幼稚園児か小学校低学年レベルの『子供だった』わけです。  ここで、ようやく「いつか書きさえすれば、傑作が書けるに違いない」という根拠のない自信が打ち砕かれました。私は天才ではなく凡人、いやそれ以下だろう、と。そもそも中学受験の段階で「文章力がないので、将来は文系ではなく理系に進みなさい」と言われていたくらいですからね。ああ、作家になることなど自分には到底無理なのだ、と悟るわけです。  ちなみに、実際に理系に進むと「むしろ理系こそ文章力は重要だろ? 研究成果を論文としてまとめたり、いや、そもそも最初に上を説得できるような文章で研究計画を書いたりしないといけないから」と感じるようになったのですが……。まあ、これは余談ですね。  話を戻します。  こうして、一度の執筆で夢破れた私は、以降、二度と小説を書くこともなければ「小説家になりたい」と考えることすらないまま、一生を終えるのでした。……とはならないのが、人生の面白いところ。  十年以上も小説を書くことはせず、それどころか、大学生活をエンジョイするようになって――といっても元来が人見知りの私なのでリア充とは程遠いレベルの『エンジョイ』でしたが――読書量すら減っていた、ある日のこと。  当時、大学を卒業しても残って学生を続けていた私は、若い後輩たちから「仲間たちの間で、ホームページを作る遊びが流行っている」という話を耳にしました。個人サイトの設立ですね。  これも、今とは少し時代が違う、というのをわかっていただけないと、誤解が生まれるかもしれません。まだブログなんて言葉は存在せず、あくまでも個人ホームページ。各自がHTMLを打ち込んでサイトを作っていた時代です。  ホームページで何を発表したいか、というよりも、ただ『HTMLを打ち込む』ということ自体を面白いと思う、という感じでした。少なくとも、私としては。中学生の頃にBASICで簡単なゲームを作る際、それがゲーム雑誌に投稿できるレベルではなくても、ただBASICでプログラムを書くこと自体が面白かった。それと似たような感覚でした。  そうやって作った最初のホームページは、当時研究していたウイルスをテーマとしていたのですが……。しばらくして、ふと思いました。せっかくインターネットで公開する以上、もっと違う「見てもらいたいもの」があるのではないか、と。  そこで二番目に作った個人サイトが、自作の推理小説を披露するページです。ほら、以前に書いた原稿用紙80枚の短編。あれを長編として書き直してみよう、ということです。もはや何かに応募するなんて大それた考えはありませんでしたが、インターネット公開で他人に読んでもらえるならば、小説家になる必要もありませんからね。  その原稿用紙80枚の短編だけでなく、頭の中には、もっと短い推理小説のアイデアもいくつかあったので……。さっそくホームページを作って、掲載し始めました。  しかし、根が飽きっぽい私。掲載し始めたところで、すぐに停滞。確か、三年くらいは放置していたと思います。それがホームページ遊びに戻ったのは、本業であるはずの研究活動が面白くなくなったから。なぜ面白くなくなったかというと、研究の自由度が減ったから。なぜ自由度が減ったかというと、博士論文としてまとめる段階に入ったから。  ……というわけで。博士論文執筆のために、研究室へ赴いても、実験室で手を動かすよりも机の前でパソコンと向き合っている時間が長い、という時期。私は博士論文を執筆しながら、自分のホームページで小説を書いていました。  そうやって自分のホームページで完結させた推理小説は、今のWEB小説の基準で言えば、長編が二つと中編が二つ。残念ながら、その個人サイトは、プロバイダのサービス終了に伴い既に消滅していますが……。当時の作品のトリックやプロットを基にして、今は投稿小説として書き直しています。まだエブリスタには投稿していませんが、いつかはこちらにも掲載してみたいですね。中には「小説家になろう」の方のコンテストで、一次選考だけ通過した長編や中編もありますので。  と、WEBサイトについては、まだ先なので。  話を戻します。  個人サイトでの小説執筆。熱中していたのは、ほんの一時期であり、その後は、細々と、というかダラダラとやっていただけでした。  そもそも、個人サイトって、あんまり読んでもらえないのですよね。訪問客自体が少なくて。当時は今よりもWEB検索が充実していなくて、確か検索に引っかかりやすくなるHTMLタグなんてものもあったはず。  まあ私自身、他人様の小説掲載サイトを訪れることは少なかったので、自分のところが読まれないのも当然な気分でしたが……。  ここで、素人作家としての私に、また一つ転機が訪れます。  それは、日本語に飢えていた、という時期。アメリカで働いていた頃の話です。  渡米して最初の一年や二年は、見るもの全てが珍しかったり、ようやく英語に慣れてきたり、と色々ありましたが……。  英語圏で働いていると、日本語から離れてしまうのですよね。向こうで知り合った日本人との飲み会、なんてものも結構頻繁にありましたけど、そういうのに出なくなると、一ヶ月以上全く日本語を話したり聞いたりしていない、という時期も出てくる。  向こうで知り合った日本人がおっしゃっていましたが、電子メールすらなかった時代は、読み書きすらなくなる、という時期もあったとか。それと比べれば、私の時代は、もうインターネットがあったので、日本語を見たければパソコンを開けばいいわけで……。  一時期ハマっていたのが、匿名掲示板の「昔の漫画を当時の気分に戻って毎日一話ずつ語り合おう」という『連載中スレ』。そこで大学時代に普通に読んでいた漫画のあらすじやファンの考察などを読むうちに、自分もその漫画のファンになって。続いて、その漫画の二次創作小説が掲載されているサイトを見に行くようになって……。  小説を読むほどガッチリと文章が読みたいわけではない、でも漫画のように絵が中心では物足りない、という私には、二次創作小説はちょうど良かったようです。そこで色々な作品を読み漁るうちに、自分も書いてみたい、となったのが2007年12月のことでした。  二次創作小説のサイト。あくまでも個人の方々が趣味で作っておられるサイトですから、いわゆる小説投稿サイトとは少し違います。しかし、たくさんの人々が集まって読んだり書いたりしている、という時点で、かつて私が作っていた個人サイトとは、全くの別物です。  二次創作ではありながら、ただの書き手の自己満足ではなく、きちんと読み手を意識した執筆。感想欄には、今の小説投稿サイトよりも手厳しいものもありました。他の方々の作品に対する感想を見て、今でも「自分が執筆するにあたって気をつけよう」と思っている点があるくらいです。  そんなわけで。  2007年12月が、ある意味では、私のWEB投稿デビューでした。オリジナル小説ではなく二次創作小説ですけど。  結局、在米時代に二つ、帰国後にさらに二つ、合わせて四つの二次創作サイトを利用させていただきました。以降、ずっと書き続けていたわけではなく、それでも何年かは遊ばせてもらったのですが……。  ある時。  パソコンが壊れました。  いや、正確には何度目かの『パソコンが壊れました』だったのですが。  それまでとは違って大事件になったのは、買い直したパソコンでは、バックアップしておいたファイルが読み込めなくなったこと。OSのバージョンアップに伴い、対応ファイル形式が変わってしまったそうです。  投稿するつもりで推敲中のエピソードもあったのですけどね。いったん紙でプリントアウトして推敲している、というものもあったので、その話に限っては、打ち込み直せば良かったのでしょうけど……。  ここまでくると、もうガックリきますよね。構想中のプロットとかメモとか資料とか、全部ダメになったわけですから。いわゆるモチベーションの低下というやつです。  そもそもが二次創作小説、完全に趣味でやっていた活動。やる気がなくなった時点で、縁の切れ目です。  だから、辞めてしまって……。  そこから、さらに数年。  やっぱり何か「物語を書く」という行為をしたくなったのですよ。  でも、もう以前の二次創作の続きを書く自信はない。私は二次創作小説を書く際、例えば研究論文を書くにあたり参考文献となる論文に目を通すのと同じ気持ちで、原作漫画・原作ラノベの必要な部分を読み直すようにしていたのですが……。  何年も書いていなかった分野の二次創作を書こうと思ったら、その『必要な部分』が膨大になるのです。特に、この時点で私が主に書いていた分野は二つあって、片方は原作が漫画、もう一つはラノベ。後者は、もう世界観を大きく忘れてしまっており、例えば着火器具はマッチだったのかどうか、という作中の文明レベルとか、登場キャラクラーの口調とか、いくつかのイベントの時系列とか……。  そういうのをもう一度頭に叩き込む、という作業をするほど原作を好きではなかった、というのも大きな理由だったのでしょうが。ともかく、もう二次創作を書くのは無理、と思ったのでした。  それでも物語を描きたいのであれば。  むしろオリジナル小説を書くほうが簡単だろう、と思えたわけです。  あと、頭の中に、書いてみたいファンタジー小説の構想があった、というのもありますね。  そこで「小説家になろう」に登録したのが、2018年9月。それまでは二次創作の投稿とか、オリジナル小説だけど誰も来ないような個人サイトだけで披露とか、そんな感じでしたから、この『2018年9月』が、オリジナル小説の投稿としては初めてとなります。ペンネームも一新して、これが『烏川 ハル』のスタートでした。  その後、2019月4月には「カクヨム」、2019月9月には「セルバンテス」にも登録。2020月3月に始めたこのエブリスタが、私にとっては四つ目の小説投稿サイトとなります。  本当は、この四つに関して「なぜそのサイトに登録したのか」を書いていくべきかもしれませんが……。  あまりにも長くなったので、それは次回ということで。一応、それぞれの小説投稿サイトの特色に少しでも触れるのであれば、このエッセイの本論になるでしょうから。  とりあえず。  こんな私ですから、「小説家になろう」や「カクヨム」のような他の小説投稿サイトとの比較を書くにあたり、二次創作時代の経験を踏まえる場合も出てくるかもしれません。つまり、いわゆる小説投稿サイトではなく、個人が運営しておられる投稿サイトを使った上で、それらと比較するような感想です。また、それ以前にWEBで書くこともできなかった時代の執筆環境と、比較する場合もあるかもしれません。  そんなエッセイですが……。  これから、よろしくお願いします。    
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