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「薫さん、お疲れ様です。早速、例の所行ってきました」
会社に戻り、真っ直ぐ薫さんのデスクに向かった。やる気に満ちて足取りも軽い。
「あぁ、どうだった?やっぱ怪しい感じ?」
「それが全く怪しくないんです」
「怪しくない。ふーん、どんな感じか教えて」
冷静さを装っている時程、薫さんは興味を持っている。
そんな情報しか無いのかとガッカリされないように、今日は取材のお願いに行っただけなので、詳しい話しは聞けてないですよ、と前置きをして予防線を張った。
「代表者は、小池麗香さんって五十代前半位の女の人でした。物凄く顔が整っている人を想像していたんですけど、全然普通の人で驚きました。美人と言うより愛嬌があるタイプで、ナルシシストとは真逆な印象だったんです」
「美人しかナルシシストになれない訳じゃ無いでしょ。思想と外見が必ずしも一致するわけじゃないわよ」
薫さんが少し呆れたように言った。
「思い込みをしない、フラットな心で取材しなさい」って教えを忘れたなって怒られたようで、えーっと場所なんですけど、と誤魔化して話しを続ける。
「薫さんがメモに書いてくれていた住所の通りでした。アポの電話入れた時に確認してから行きましたけど、本当にあるかドキドキしましたよ。白を基調にした、二階建てのお洒落なビルでした」
「住所合ってたんだ。航空画像で検索しても出てこなかったからさ。電話番号も合ってたし、良かった良かった。心配してたんだよねぇ、何しろ盗み聞きした情報だから」
「ビル自体新しそうでしたから、まだ航空画像が最新になってないんじゃないですか?」
開き直ったように平然と言う薫さんに少しイラっとしたけど、棘が出ないように気を付けて返事をする。成程、と納得してくれたようだったので話を続けた。
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