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別れ
お見合いで結婚した夫、日向理一郎と、私、日向奈緒美は本日離婚が成立した。
結婚生活三年目にしての破綻である。
三年目と言えば、性格の不一致、考え方の相違、どちらかの浮気等々、そういった問題が浮上しやすい節目である。
私達夫婦はそのどれにも当てはまるようで当てはまらず、かといって特に珍しくもない理由で離婚した。
結婚当初、優しかった夫の理一郎は三年過ぎたくらいから豹変した。
仕事の帰りが遅くなり、どうしたのかと問うと、突然怒り出し激しくわめき散らす。
頻繁に誰かと連絡を取り、出ていったかと思えば、いつも同じ匂いをさせて帰ってくる。
家のものではないシャンプー又はボディソープの匂いのようで、近付かなければわからないようなものだ。
浮気だろうか?と訝しむが、キレて暴れられても困るので、問いただすことも出来ない。
夫に怯え、顔色を窺う毎日。
ついには何を話しかけても怒鳴られて、私は夫に何も言わなくなった。
地獄のような日々はそれからしばらく続き、耐えかねた私は、ある日逃げるようにして家を出た。
そして、実家から弁護士を通じて手続きを進め、離婚が成立したのは家を出て三ヶ月後。
夫の様子について、弁護士はこう言っていた。
「本人、わりと冷静でしたよ?こうなることは分かっていたような……そんな感じでしたね」
私とは何の話し合いもしなかったのに、他人とはちゃんと話せるんだなと悲しくなった。
少し前までは、誰もが羨む仲の良い夫婦だったはず。
そろそろ子供も欲しいね、なんて話していたのに。
だけど、それは終わったことだ。
私はあの理不尽な生活から解放されたのだ。
恐怖に支配され、顔色を窺い続ける日々にはもう二度と戻りたくない。
前を向こう。
そして、自分の人生を生きよう。
私は、新しい場所で一から始めようと気持ちを切り替えた。
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