異変

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異変

「花、何やってんだ。飯食わねぇのか」 それはある日の昼飯時の風景だ。 花が昼飯を食べに来ないから、様子を見に部屋へ行くと、何やら難しい顔で机に向かって考え事をしていた。 らしくない顔に怪訝さを覚えつつ声をかけると、ハッと我に返ったそいつは花開くような笑顔でこちらを見た。 「海にいちゃ!どうしたの?」 「どうしたの?じゃねぇ。お前が飯食いに来ねぇから見に来てやったんだよ」 「あ!お昼ご飯!食べる!!」 ぴょんと椅子から飛び降りて、飯が並べられた机にぴょこぴょこと俺の足元をすり抜けて一目散で走っていく。 やれやれと俺も引き返し席について、2人で手を合わせてから昼飯を食べ始める。 「…おい」 「あ、うん?なぁに?」 「何じゃねぇ。食わねぇのかよ」 「え!ううん!食べるよ!食べる!」 明らかにおかしい。 食の進み具合がいつもと違う。 こいつは飯の他に考えることも無い食い意地の張ったガキで、食事を前にすればすぐに飛びつくような奴なのだ。 しかし、今日は軽くひと口、外で買ってきた握り飯を食べて手を止めたのだ。 そして何やら興味深そうにそれを隅々まで眺めていた。
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