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02 誘う声、導かれる世界
―海ヶ丘中学校1-A教室
この学校は、若い数字の学年ほど上の階に教室が用意されている。しかも校名に無いだけで実質中高一貫校で高校の敷地内に併設されているため、かなり大きな3階建ての校舎となっていた。
で、そんな学校の新入生たちの教室は3階にあった。今年の新入生は総合350人と開校以来二度目の300人超えである。
階段の数の多さも桁違いだったため、一輝は咲姫のカバンを持ってあげることにした。
「ほ、本当に一緒のクラスだったなんてね……」
「そ、そうだね……びっくりだよね……」
(こんな偶然ありなの!?初対面で仲良くなったばかりの子と……男の子と……一緒のクラス……きゃーーー!)
咲姫は脳内で一輝を異性の子として意識してしまったのか、せっかく階段を登る途中で冷めた熱が戻ってきてしまった。
「あの……花園さん、さっきから顔赤くしてばっかりだけど大丈夫?」
「えっ、あぁっ……うん、大丈夫だよ!」
「もう我慢できない……ごめん、花園さん!」
一輝は流石にただ顔が赤くなったとは思えなくなり、熱を確かめるために咲姫の額と自分の額をくっつけて熱が無いか確かめた。
(あわわわわ……どどっ、どうしよう……こんなことされたら、ドキドキしちゃうよ〜!)
「うん、熱は無さそうだね……ん?」
咲姫が体調不良では無いと分かったところで、一輝の〈ツインギア〉の〈デバイスフォン〉が突然激しいバイブを起こした。
メッセージボックスに彼宛で何やら怪しげなメッセージが送られていた。
〈やっほー、ラッキーボーイ!あたしは迷宮路遥、人呼んで〈仮想世界のマジシャン〉だよ!大至急、海ヶ丘中央公園に来て!大事な話があるからさ
株式会社Freesゲーム部門CEO迷宮路遥〉
あまりにも唐突に届いたそのメッセージの真意を確かめるべく、一輝は学校をかけだして中央公園へと向かった。
―海ヶ丘中央公園
謎のメッセージ通りに噴水広場にボサボサで長い、そんな髪にカラコン無しで赤い瞳を持つ女性が立っていた。一応差出人のところにCEOとあったためか、スーツを着ていた。
「おぉ、来たねラッキーボーイ!改めて、あたしが迷宮路遥だよ。今日はね、君にとってはちょっとドキドキするような体験をしてもらいたくて呼んだんだ!」
遥はそう言うと持ってきたアタッシュケースをカチャカチャと開け、中から〈ツインギア〉を取り出した。
「それって、〈ツインギア〉……ですよね?何で僕に?」
「これから君には仮想世界〈ジュエリア大陸〉にダイブしてもらうよ!ちなみに拒否権は無し!それじゃ、パパっと着けちゃうからじっとしててねー」
と言って遥は〈ツインギア〉を一輝の頭部に手際よくセットし、電源を付けた。
「ちょっと……何するんですか?」
「はいはい、男の子ならつべこべ言わない!はい、それじゃ行ってらっしゃーい!」
遥のいい加減な対応の後、一輝はその場で倒れ、そのまま仮想世界へとダイブしていった。
―アバター制作の間
『おはよ……どう?この世界に来た感想とか、あるなら教えてくれるかしら?』
目の前にいたのは、他のこの手のゲームでは珍しくないナビゲートピクシーだった。赤色の髪と瞳、赤いワンピースとその立ち振る舞いから、元気な女の子という雰囲気が漂っていた。
「えっと……正直実感がわかないです。でも、本当にこんな世界があるんですね」
『ビックリしたのね……ま、無理もないわよ。この世界はできてからまた1年も経ってないから』
「えぇ、そうなんですか!?」
『そっちの言葉で〈サービス開始〉って言うのかしら?それがされたのが最近ってことなのよ』
「ところで……僕がここに呼ばれた理由ってあったりするのかな?」
『あら、可愛い顔して結構鋭い質問するじゃない。あなたが呼ばれた理由ってのは……こういうことよ』
謎のナビゲートピクシーが大きな鏡を一輝の前に置いた。すると、一輝の影が竜の形に変化した。
「うわぁあ!?ド、ドラゴン……なんで僕の影が!?」
一輝は鏡に映った竜に思わず驚き、でも少しだけ興奮していた。
『それはね……あなたが〈選ばれた勇者〉だからよ、カズキ』
「僕が……選ばれた勇者……」
『そ、そして私がナビゲートピクシーのルージュっていうわけ。実はこの世界には来たるべき災厄が待っているの。けどね、この世界には二人の勇者が引かれ合い、巡り会う時、世界が救われるっていう伝承があるの!』
「その伝承の勇者の片割れが僕ってわけか……」
『そうなのよ!これからしばらくは私が側でサポートするから、カズキにはこの世界での〈歪み〉を探って、それと戦ってほしいわ』
「……」
(僕にできるのかな……勇者になれるって聞いて舞い上がってはいるけど、それだけ僕をよく思わない人たちに命を狙われるってことだよね。けど……この子の言う通り、世界に災厄が降り注ぐなんてもっと嫌だ!なら、僕は……)
「分かった……やれるだけやってみるよ!それで君の世界が少しでも輝くっていうなら!」
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