03 黄金のアマリリス、瞬光のブルースター

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03 黄金のアマリリス、瞬光のブルースター

「わぉ、見た目によらずカッコいいこと言うじゃない!それじゃあそんなカズキヘ私からのプレゼントよ!」 カズキの左側の腰が光を放ち、剣の形になった。 「これって一体……」 「この世に2本しかない伝説の聖剣の片割れ〈奏聖剣アルコスティック〉よ。音を奏でて自分を強化したり、仲間を援護したりできるわ」 「そっか、ありがとうルージュさん。それじゃあ、行ってくるよ!」 「うん!行ってらっしゃい、カズキ……あなたに星の祝福がありますように」 ―東の森 眩い光に包まれて飛ばされた先は森だった。とはいえ、序盤に出てくるいわゆるザコモンスターの類しか出てこない初心者向けのダンジョンだった。 「よし、まずはレベリングだ……えへへっ、こういうのは得意なんだよね!」 カズキはそのまま森の中へ入っていき、大小様々なモンスターを片っ端から倒して一気にレベル10になった。 「この剣、何でかはよく分からないけど手に馴染むなぁ。無理に自分を強化しなくってもある程度は戦えてるし」 カズキは元々別の似たようなゲームでレベリングを繰り返していたこともあり、奥地へ進んだ頃には20まで上がっていた。 そもそもカズキのステータスは敏捷性と手数が極端に高かったことに加え、これまでの経験からどんな風に立ち回れば安全かを理解していたため、苦労しなかったのだ。 「もうレベル20かぁ……モンスターの総撃破数ももうすぐ100体、どんどん強くなるんだ!」  その後、カズキの前に漆黒の鎧を纏った謎の騎士が現れた。 「誰だよ……君?」 『私は黒騎士……光を飲み込み、糧とする者だ!』 黒騎士は名乗りながらも黒い剣を引き抜き、カズキに襲いかかってきた。当然カズキは持ち前の反射神経を駆使して初撃を躱しつつ、自身も即座に攻撃を開始した。 元々カズキがプレイしていたゲームでは、彼はトップクラスの剣士と呼ばれ、ネット掲示板ではその存在が英雄のように持ち上げられていた。 さらに彼は、正確に攻撃しつつもゼロ距離からですら躱してみせるなど、リアルの彼を知る者では想像もつかないほど高い戦闘スキルを持っていた。 「くっ……今はこの森を抜けることを優先したい!だから、今は君と戦ってる場合じゃないよ!」 『お前に戦う理由が無くても、私にはある!私はより強き光を飲み込み、さらなる高みを目指す!その為ならば善でも悪でも利用するまでのこと!』 黒騎士は肘打ちでカズキを地に叩きつけ、足蹴にした。 「どうしてもどかないって言うなら……僕も本気で相手をするしかないね!はぁぁあっ!」 カズキは初期装備の小さなマントを犠牲に黒騎士の拘束から逃れると、そこからは目にも止まらぬ速さで攻撃した。 『フハハハ、やればできるではないか……少年!さあもっと私と踊ってくれ!』 「うおおおおおおっ、僕に本気を出させた事……後悔させてあげるよ!」 カズキには彼も知らない能力(スキル)光速化(アクセルシャイン)〉が備わっていて、これにより一定時間マナを消費して文字通り光の速さで動き回ることができるのだ。 発動の際には、カズキ自身が大きく深呼吸する必要こそあるがそれでも十分強力なスキルである。 周りの木を蹴っては加速し、すれ違い様に斬りつける……この一連の動作の繰り返しなのに、相手は全く動じていなかった。 ……カズキの能力発動時間が終了するまでは。 『がむしゃらに斬りかかるだけでは私には勝て……ぐぉっ、な、何……何が起きている!?』 〈光速化〉の最大の強み、それは〈極限の時差攻撃〉が可能という点だ。この能力の乗っかった攻撃はどれも見切り無効にして防御不可の効果が発生するため、うまく利用すれば半永久的な連続攻撃を行うことも可能である。 そのため、黒騎士は最後の一撃は防げたが能力発動中の攻撃は全て必中していたため、蓄積されたダメージが能力発動終了に伴って一気に襲いかかってきたのだった。 「僕の名前はカズキ……誰よりも一番輝く男を目指してるんだ」 『くっ……ここは一度身を引こう!何れまた君とは手合わせしたいものだ。では、失礼!』 ―その後 結局カズキは疲弊しきったこともあり、ほとんど戦闘は行わずに休息を繰り返し取りながら進んでいた。すると出口付近で何やらマップを開いて独り言のように何かを言ってる少女にあった。 金色の髪で鎧は無いか、動きやすそうな短めのスカートから健康的な太ももがチラついていたため、全体図が見えたカズキは思わず顔を赤らめてそっぽを向いた。 しかし、向こうがカズキの気配を感じたのか近づいてきた。 「す、すまない……ビギニーの街へ向かいたいのだが、分からないから誰かに道を聞いてみようと思ってな。それで、君は知っているか?」 「あ、はい……僕、今日初日だったんですけど元々この手のゲームが好きだったから、どんどん先へ進むうちに色々データが解禁されたので、良ければ街までご一緒しますよ」 「そうか、それは助かるぞ!私はリリスだ、よろしく頼む。えーと」 「あ、自己紹介まだでしたね。僕はカズキって言います、よろしく!」 二人は握手を交わした。
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