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N-02 奇跡の元、集う星たち
仮想世界へのダイブのために一度仮眠状態となった一輝が次に目を覚ました場所は、かつて彼がこのゲームのベータテストをしたときに訪れた場所だった。
『ちょっとちょっと、今の今までどこ行ってたのよ!いきなりオフラインにされて、外部とのコネクトも遮断されて大変だったんだからね!』
ナビゲートピクシーのルージュは一輝が戻ってきたことにホッとしながらも、ちゃっかり自分の溜まりに溜まった不満をぶつけてきた。
「あはは……それで、今この世界はどうなってるの?」
「私はこの世界ではあくまでもあなたを多方面でナビゲートするようにしか指示されてないから何とも言えないんだけど……3年前と比べたら、少しだけ厄介かも。具体的なことは、ゲームマスターとかいう人しか知らないはずよ」
「そっか……そうだよね、世界の変化くらい自分の目で見たほうがいいってこともあるからね」
「うんうん、やっぱり凄いわねカズキは。ベータテストの時のセーブデータは消えてるけど、装備品に関してはバックアップを取っておいたわ。ほら、両手出してみなさい」
カズキが指示どおりに両手を前に出すと、彼の両手にストンと鞘に収まった純白の剣が出現した。3年前の彼の相棒〈アルコスティック〉だ。
「ありがとう、ルージュ!あ、これから僕ギルドを組む約束があったから……ターストの街まで飛ばしてくれないかな?」
「ホントはダメだけど……カズキは別に変な考えがあるった感じではないからね……いいわよ。でも、転移先は街より少し遠目の転移門になるわよ?」
「歩いていくから大丈夫だよ。それじゃあお願い!」
「一回だけだからね……転移、タースト!」
ルージュの元気のいい声と共にカズキはダースとの街へと転移した。
―ターストの街前転移門
カズキが転移門に到着したその先で、一人の猫耳のついた女の子が何やらあたふたしていた。
「えーっと……キミ、どうかしたの?もしかして、この手のゲームは初めてだったりするの?」
「はひゃん!……じ、実はシャミアは今ものすごく困っています!お、お腹が……空いてるんです」
「そ、そうなんだ……それなら、これなんてどうかな?」
カズキは現実である程度ゲームを進めたらログアウトして食べようと思ってポケットにしまっておいたチョコ棒みたいな菓子を取り出した。
彼はこの世界の一般的な男性用の服の上から鉄の胸当てとマントをつけてただけなので、下はズボンだったこともあり、現実が反映されるこのゲームの仕様上、偶然チョコ棒が入っていたのだ。
「ありがとうございます!助かりましたよ、通りすがりと思われる勇者殿!」
「勇者ってそんな……あ、そうだ!これからギルドを立ち上げるんだけど、キミも来ない?」
「おおっ、ギルド!ぜひともシャミアを仲間に加えてください!」
シャミアは現実ではその不思議な性格のせいで友達が少なったが故、こうして歳の近い人に声をかけられることがとても嬉しかったらしく、即OKした。
一方カズキは、年頃の女の子に顔を急に近づけられて思わず心臓が早く脈打った。
「そ、それじゃあ……とりあえず街の中に入ろっか」
「はい、分かりましたよ通りすがりさん!」
「カズキでいいよ、シャミアさん。とりあえず今から待ち合わせ場所の噴水広場まで向かうね」
二人はその後も色んな話をしながら歩き、そして街一番の広さを誇る噴水広場に到着した。
「あ、カズキくん……とその子は誰?」
「紹介するよ。この子はシャミアっていうらしいんだ。僕らのギルドに入りたいって言うから連れてきたんだけど……」
「確かに、ギルドを発足させるには最低でも4人はいるし、見た感じ攻撃系統の魔法を使ってくれそうだからな。悪くないんじゃないかな」
「うん、リリスちゃんの言う通りだよ!仲間は多い方が楽しいよね!」
サキもリリスも突然のことだったにも関わらず、ギルドメンバーが増えることに喜びを感じていた。
「あぁっ……ありがとうございます、一生ついていきますぅ!」
「中々に面白い子だな……君は」
―冒険者詰所
「では、ギルドマスターを決めてください!」
係員からの一言に4人全員が顔を見合わせ、固まってしまった。そう、ギルドに必要不可欠な存在〈ギルドマスター〉を決めるのを忘れていたからだ。
「どどどど、どうしましょう!で、でもここはやはりカズキさんに頼むべきかと!」
「そ、そうだな……私としても、みんなをまとめるのは男であるカズキが適任だと思うな」
「ね、みんなも言ってるんだし……いいよねカズキくん!」
(どうしてみんな僕の意見を聞かないんだよ!まぁでも、ここでああだこうだ言うのは良くないし……)
「あの……よろしいでしょうか?」
「あっ、はい!お待たせしてすいません……改めて、ギルドマスターは僕です!」
「はい、分かりました!では、ギルド名はどうしましょう?」
(そうだな……人の出会いは奇跡って聞いたことあるし……何となく星みたいにキラキラするギルドにしたいから……)
「うん、決めた!僕らのギルドは……〈ミラクルスターズ〉だ!」
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