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N-03 告げられる真実、立ち向かう決意
―〈ミラクルスターズ〉ギルドハウス
ターストの街では初心者もしくは初結成ギルドに無償で家を提供していたこともあり、カズキたちもギルドハウスをもらい、個々にくつろいでいた。
「しかし意外だったな……ギルド名はてっきりもう少し練るかと思っていたが、すんなりと決まったな」
「頭の中で咄嗟に浮かんだのがあの名前だったからね……あはは」
「けど、これからどうするの?カズキくんとリリスちゃんはベータテストの関係でレベルとステータスだけは整ってるよね?私とシャミアちゃんはどうしよう?」
「可能なら近くの狩り場でレベル上げをしたいところだけど……」
「同じ考えを持つ者に先を越されて枯渇するのがセオリーだな」
カズキとリリスはベータテスト時代にレベル上げ中に何度も狩り場のモンスターが枯渇し、思うように進まなかった経験を味わっていたため、この手のゲームの初心者であるシャミアやサキにアドバイスできたのだ。
「つまり、嫌でも遠出していきなり危ない橋を渡れ……と?」
「極論はそうなってきちゃうかな……近隣の都市だとファースターが近いけど、あそここそ初心者殺しでベータテスト時代に泣きを見た人が多いから僕らから勧めるってことはできないね」
「道中にダンジョンなどは無いのですか?」
「確かにあそこにはターファス山洞が存在しているが、今のパーティーレベルでは突破はほぼ不可能だな」
(ターファス山洞に出てくるゴーストミミックは多分、花園さんに絶大なトラウマを植え付けるであろう見た目だから、正直次の街に向かうこと自体も難しかったりするんだよなぁ)
ターファス山洞とはリリスやカズキの言う通り、常にハイレベルモンスターが徘徊している場所の一つで、普通にファースターの街に行くには無視して構わないダンジョンだった。
「ねぇ、この『シングーの村』って何?」
咲姫がマップを見て指差したのはターストに最も近い村•シングーだった。
「そこは地図にもある通りここから近い村のことだよ!何ならそこを拠点にする?」
カズキがギルドの仲間に提案しようとした時、ギルドハウスの背景がぐにゃりと歪み4人はそのまま謎の部屋に飛ばされてしまった。
―謎の部屋
「久しぶりね、カズキ。どう、元気にしてた?」
「ちょっとルージュ、これ一体何のつもりだよ?」
謎の部屋の正体、それはカズキがベータテスト時代にお世話になったナビゲートピクシーのルージュが管理する部屋だった。アカウント特定が不能な特殊エリアだったがこれはルージュが選んだ者に〈真実〉を伝えるために細工したためだった。
「急に呼び出したことなら謝るから、ひとまずは私の話を聞いてちょうだい」
「分かった……」
「あなた達4人に私から一つお願いがあるわ。カズキにはもう伝えてあると思うけど、今この世界には危機が迫ってきているの。あなた達にはこの世界に息づく3つの〈命〉について調べてほしいわ」
いきなり訳の分からないことを言われメンバーが個々に固まる中、シャミアが質問した。
「ルージュさん、3つの〈命〉って言いましたけどそれってどういうことですか?私達以外に人間であってそうじゃない存在がいるってことですか?」
「あら、最年少のあなたからそんな言葉が聞けるなんてね。いいわ、〈真実〉を教えるわ……この世界には大きく分けて3つの〈命〉が存在するわ。一つはあなた達みたいなダイブしてくる人間、2つ目に挙げられるのがこの世界を舞台にしたゲームってところでゲーム内のキャラ、そして最後は……」
「最後は……?」
「自己成長型のAIよ。それもかなりの数が存在しているわ」
(こ、この世界はゲームなのに……人間以外の、ましてや人工知能までもがここにいるのか!?ルージュの話が全て本当だとしたら、見分けないと取り返しが付かなくなるんじゃ……)
カズキは今まで以上にゲームに対する一種の恐怖心が込み上げてきた。しかしそれ以上にそんなものをいくつも用意できた存在について引っかかっていた。
「人工知能って……ルージュちゃんもなんでしょ?それはまずいよ!もしゲームキャラと人工知能が戦ったら……人工知能が負けちゃったら……」
サキもサキで意味は理解できていなくても多少は恐怖で震えていた。
「ルージュと言ったな……具体的にはどのように見分ければいいのだ?それが分からないままでは私達はいちいち震えなければならんのだが」
リリスの鋭い反論に驚きながらルージュは話を続けた。
「それについては大丈夫よ。みんな頭の上にあるアイコンの色でプレイヤーかAIか、それともNPCなのか判別できるはずだから。後は本当にあなた達次第よ。見つけ次第、その子達を色々支えてあげて」
ルージュは小さな体で深く頭を下げた。
「そっか……分かったよ、ルージュ。僕らで何とか頑張ってみる、それでいいかい?」
「ええ、頼んだわよみんな!」
「「「「はい!」」」」
カズキたちがルージュからの願いを快く承諾するとまた辺り一面が歪み、元のギルドハウスに戻った。
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