N-04 願い星の塔、影の自分

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N-04 願い星の塔、影の自分

―現実世界 海ヶ丘高校1-E教室 (ルージュから人工知能やNPCを助けてほしいと頼まれた後、僕らは一度ログアウトすることにした。長いこと居すぎたから一度休もうってことになったからだ。それから半日過ぎ、こうしてまた高校に通ってるわけだ) 「二人とも、聞いてくれ!」 リリスは何やら焦ったような口調で咲姫と一輝を呼び止めた。 「ど、どうしたのリリスちゃん?そんなに慌てて、何かあったの?」 「じ、実はだな……仮想世界で〈願い星の塔〉なるダンジョンが見つかったそうだ!私も今朝父からそのことを告げられた際に思わず驚いてしまってな」 「〈願い星の塔〉って……僕知ってるよ、そこ」 「え?一輝くん、知ってるって……行ったことあるってこと?」 「ああっ、順を追って説明した方がいいよね。中学の頃に花園さんには何度か話したことがあると思うけど、夢の中で時々不思議な場所を歩くことがあるんだ。もしかしたらそこが例の〈願い星の塔〉なんじゃないかなって思ってさ」 一輝のあまりにも唐突な発言に思わず咲姫もリリスも目を点にして黙り込んでしまった。 「な、なるほどな……では、具体的にそこがどんな場所なのか知ってるというわけか」 「うーん……具体的にって言われるとそうでもないんだよなぁ。けど、あそこは確かにダンジョンだったよ」 「へぇ〜……じゃあ、今日の放課後にみんなで行ってみようよ!」 「そうだな……私も気になっていたところだし、ギルドのレベルも高くなってきたところだ。腕試しといこう」 ―放課後 仮想世界 ターストのギルドハウス 「えぇっ、〈願い星の塔〉に行く!?今からですか?」 「うん、僕らのレベルなら問題ないと思うからさ」 「あそこは噂だと〈ジョブ〉の進化のためのダンジョンだそうですよ?さらに、選ばれた人には星の力なるものが手に入るとか……」 「なるほど……では、早速出発しようか!」 〈願い星の塔〉は期間限定イベントのダンジョンで、いくつかの層に分けられた塔を登っていくというものだった。 しかし、ターストを含む5つの街に何の違和感も無くそびえ立つ塔に登ったら最後、塔内でHPが尽きない限り脱出不能という鬼畜要素全開のイベントでもあった。 ―〈願い星の塔〉1階 街から出て東へ歩くこと数時間、紺色の壁が何とも言えない存在感を醸し出している塔が見えてきた。これこそがカズキたちが挑戦する〈願い星の試練〉が行われる塔だ。 「わぁ……思ってた以上に高くてびっくりだよ……」 「あぁ、流石の私でもこうも高いと少々震えてしまうな」 「あばばばば……シャミアは強い子……シャミアは強い子……」 カズキ以外の3人はそれぞれ色んな感情が入り混じりながらも結果的にはすごく震えていた。 「だ、大丈夫だよ……僕ら平均レベル19だよ?きっとここのモンスターはそこまで強くないはずだからさ……」 「や、やはりカズキもそう思うか。なら、私もいつまでも震えるわけにはいかないな。よし、ここはみんなで力を合わせて挑もうじゃないか!」 カズキの声やリリスの奮起によって他の二人は何とかやる気が出たのか、早速塔内を進むことにした。 (夢で見た、とは言ったけど……まさか今度はある意味本当に登ることになるなんて思いもしなかったな) 『よぉ……よく来たな、もう一人の俺。元気にしてたか?』 真っ黒なオーラに包まれたもう一人のカズキがいきなり剣を引き抜きながら襲いかかってきた。 「ちょっと、一体何だよ!……あれ、みんなは?」 『お前の仲間ならいないぞ……この塔の試練ってのはなぁ……個々が強くなるために、己の影との戦いをしなきゃならねぇんだよ!』 「なっ……!?」 ふと、カズキは辺りを見渡したが確かにそれまで一緒に居たはずのギルドの仲間たちが姿を消していた。 『お前は何のためにここに来た?単なるゲームのイベントとして楽しみに来たんじゃないんだろ?夢を介してお前は見たはずだ……この塔でお前が得ることになる力を!』 「何だよそれ!僕は確かに夢で何度もここに来た。けど、どの夢にもキミみたいな奴は居なかった!」 カズキともう一人のカズキによる剣同士の一騎打ちは熾烈を極めた。同じ腕を持つ二人が一進一退の攻防になることはもちろん、光と影のぶつかり合い故、どちらともが優劣付け難い状態となっていたからだ。 『ほらね、そういうことなんだよ結局はさ。人ってのはホントに馬鹿だよな……自分が善であると主張するために己の影なんて一切目を向けない!』 「ぐっ……しまった、回り込まれたっ」 『ハハハハッ、所詮お前は輝くために俺を否定することしかしかできないんだよ!』 (これが今回のイベント……なのか?だとしたら、相当ヤバい気がする。自分の影と戦うことになるなんて今の今まで想像すらしなかったんだ……いざ面と向かうとどれだけ強いか分かる。だからこそ負けられない!) 「なら、ここで宣言させてもらうよ……僕は僕や僕の大切な人たちが輝くためなら、例えどんな影が僕の前に立ちはだかったとしても決して屈したりしない!」 『へぇ……言うじゃんか。なら、俺も本気で行かせてもらうぞ!』 二人の戦いは更に激しさを増すことになった。
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