N-05 重なる星の輝き

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N-05 重なる星の輝き

(僕の影が……さっきより殺意を濃くしてる!それだけ本気で来いってことなら……やってやる!) カズキは剣をくるりと回した後、影の自分に猛スピードで迫り、相手よりも速く剣を振り下ろした。 『ほらほらどうした?鍔迫り合いだけじゃ泥沼試合と化すだけだぞ?』 「煽りたいならいくらでも煽れよ!僕は父さん譲りの強いメンタル持ってるんだよ!」 『こいつは面白い!お前……蒼天馬宙の息子だってことを自覚しておきながら、自分と父が完璧に似てるとでも言いたげな様子じゃないか……だがな、お前はお前なんだよ!』 影のカズキは軽く押しのけた後、素早く連続で剣を振りカズキを地に転がした。 「ぐっ……いくら影だからっていつまでも僕より強いだなんて思うなよ!光があるから影があるように……お前だって僕がいなきゃ存在すら出来ないくせにデカい口叩くな!」 カズキは地を転がる途中で足を上手く使って体勢を立て直し、自身に無詠唱の高速化魔法をかけて先程よりも速く攻撃を仕掛けた。 『なっ……中々やるみたいじゃん?流石は俺のオリジナル、動きが違うなぁ!』 「こんのぉおお!」 カズキは手に持った二本の剣を絶えず使った父直伝の技〈ノンストップ·スライサー〉を発動した。すると、カズキは何も属性エネルギーを込めていないのに剣が青白く輝き始めた。 『ハハハ……やっとお目覚めか。それがお前の力だ!お前が俺を介して得た〈星の力〉だぁ!』  影のカズキは本物のカズキが急に覚醒した〈星の力〉に感動しながら滅多切りにされて消滅した。しかし、その直後に剣が纏っていた光は消えて彼自身もその場に突っ伏して気絶してしまった。 ―カズキの心の世界 (ここは……どこだ?) 『気が付いたか、小僧。俺が見えるか?』 カズキの目の前に青白く光る謎の翼竜がいた。しかも、テレパシーを介して彼に話しかけてきた。 「うわぁぁっ、ドラゴン!?何で僕の目の前にいるんだよ!」 『お前が俺の試練を乗り越えたからだ……今お前の体は仲間たちに保護され、治癒魔法を受けているところだ。だが、まだお前をここから帰すわけにはいかん』 「え……なんで?」 『お前の力について教える……試練を乗り越えた者として、大切なことだからな』 「……分かりました」 『お前が得た力はこの世のどの属性素も持たぬ無に近き属性……故に全ての属性を打ち消す破滅の力でもある』 「破滅の力……」 『だが、扱う者によってその力の在り方を自在に変えるのもまた事実だ。そして、お前自身を食らいかねぬ強大さも併せ持っている』 謎の翼竜はカズキのすぐそばまで迫って脅すように話した。 「僕はどんな力でも使いこなしてみせるさ!例えそれが世界をひっくり返しちゃうような力だとしてもね」 『ハッハッハ、アイツの言う通りお前はお前らしくもあり何より面白い奴だな!お前の覚悟と決意……試してやろう!』 謎の翼竜は彼に新しい剣と装備を託し、どこかへ消えていった。 ―その後、願い星の塔 憩いの間 「……くん……カズキくん!」 「……花園、さん?それにみんな!どうして僕はここに?というかここは……?」 「あぁ、私たちはあの後試練を乗り越えて中級ジョブへ上がれたが……それはそうとカズキ、その格好は一体?」 「え……」 (確かにマントとか胸当てとか、ってか全体的に変わってる!?おまけに剣まで変わってる……なんで、どうして!?) ふとカズキは自分のステータスを見てみた。すると、装備が全て一新され武器欄に至っては『名称表記不能特殊装備』と丁寧かつ意味不明なテキストで表示されていた。 「うわぁぁっ、何だよこれ!」 「いつにも増してカズキさんが強そうに見えますよ!」 「でも、ただの試練を乗り越えたって感じじゃなさそうだよね?一体何があったの?」 サキは彼女にしては珍しく不意をついた発言をした。 「無我夢中担ってたから僕もあまり深くは覚えてないけど、もう一人の自分と真っ向勝負をしたんだ。自分ってことで相当キツかったけどね」 「やはり、この塔はどういうわけかカズキに対しては謎多き反応を示すみたいだな」 シャミアやサキが驚いたり心配する中、リリスだけベータテスト時代に塔を訪れた時のことを思い出してカズキの身に起きた一連の出来事を全て理解した。 「わっ、もう夜10時過ぎだよ!明日はまた学校があるからそろそろ街に戻ってログアウトしようよ」 「それもそうだな……私たちはこの世界ではなく、現実世界の人間だからな」 「寝坊だけはしたくないですよぉ」 「それじゃあ、戻ろうか」 かくしてカズキたちは願い星の塔のクエストをクリアし、ジョブ強化することができた。しかし、カズキのみに起きた特別な変化が四人のこのあとの冒険に大きく影響してくることになるなど、このときは知る由もなかった。
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