1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
二人で作る曲
二人で作る曲
「ここがケイコちゃんの部屋か…。なんか健康的な感じがするなあ」
いやあ、テツヤと同じこと言ってたよ、アキラも(苦笑)
「…なんか、冬物はかさばるね…。これもこれもって言ってたら大荷物になっちゃうわ。もう少し選別するかな」
「でもせっかくだから、なるべく多く持って行った方がいいよ。大きい紙袋に入れればだいぶ違うし。まあ、バイクだから限度はあるか。はは…」
アキラに手伝ってもらい、アパートに持帰る荷物としばし格闘してた
***
アキラと私…
二人はこの夏、千葉の海で出会った
とても風の強い夜の海辺で…
そしてあのライブハウスで運命の再会を果たして…
二人は愛し合って、それからはもういろいろあった
たくさんのことがありすぎたって!
それから数か月…、二人は夢中で手を取り合って前に進んだ
その間、せっかちな私は、一歩一歩を常に自分に説いて、焦る気持ちを抑えてね…
それは、テツヤと別れた後の自分に課した教訓だったから
あの廃屋の中に入って、逆髪神社で聞いた声を思いだして、誓った想い…
アキラのペースに合わせてじっくりだ
大変な目の前はまだまだいっぱいなんだもん
***
アキラが部屋でギターを弾いている
といっても、アンプってやつに繋いでないから、音はカシャカシャって感じでしか出ていない
柱に背をもたれ、胡坐をかいて
私はその真正面でうつ伏せになって、両手でほっぺたあたりを支えながらそんなアキラを見てる
お風呂上りで、アキラの方からは恋コロンのいい香りが伝わってくるよ
私の両足は、膝を軸にして閉じたり開いたり…
はは…、私なりにリズム取ってるわ
...
「このメロディー、自分で考えたんだ…」
テンポがあって、さわやかなタッチがいいんだよな
アキラ、この曲好きだよ、私…
「何か…、こうして弦を弾いていたら、自然にね…」
アキラはこのメロディーには、一緒に詩をつけようって言ってくれてる
イメージはあの千葉の海…
太陽の陽射しに焦がれ、そして二人は夜の海岸で出会ことになった
で、タイトルは私が考えてくれって
アキラはいつか、二人で完成させたこの曲をステージで弾きたいって
私もその曲を聴く日を待ち続けるね、アキラ…
***
ロード・ローラーズでブロデビューのレールに乗っていたアキラ…
それ、私が壊しちゃったんだよね
あなたの将来の夢も、ギターの先生だった素敵な女性からもらったギターも
あいつらに監禁されてクスリ打たれた夜、目の前でギター、めちゃめちゃに破壊されて…
でも、今またプロでやっていける第一歩に立てて…
今度こそ、あなたの夢、壊させないから
誰にも
アキラ…、ささやかな”未来”を語りあえるところまでたどり着いんだ…
私たち…
故横田競子の日記より抜粋
ー完ー
最初のコメントを投稿しよう!