同室の幽霊ちゃん

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(そうだね。思い残すこと無くなっちゃから) 「その、すまんな、最後が俺で」 (いいよ。 あなただから、こうして好き勝手させてくれた)  彼女の気配が薄くなっていく。 この明かりのない空間で、光の粒子が集まりだし、人の輪郭を創り出していく。   「人生、楽しかったか?」 (凄く! で、この二日間も楽しかった!)    そうか、そうだよな。 わかり切っていた。  まさか、幽霊に気づかされるなんて想像もしていなかったよ。 (それで? 死ぬの?)  また、あの日と同じ口調で聞いてくる。 「わからなくなった。とりあえず、緩まない縄の結び方から調べなおすよ」 (そっか、それじゃあ、もう一つだけお節介だと思って聞いて)  なんだ? どんどんと声は遠のき、先ほどまで集まっていた光の粒子も、消えつつある。   (壁の穴、なおしておいてね♪) 「は⁉」  まさか、それだけを伝えると、完全に気配がなくなった。  俺は大きなため息をつき、仕方が無いので、穴に向かう。  ボリボリと整った髪を掻きながら向かう、すると、そこにはまだ何かがあった。 「ん?」  手を伸ばして掴んでみる。  カサっと、乾いた紙の音が聞こえてきた。  少し膨れた茶封筒が数個出てくる。 「はは、ほんと、情けねぇなぁ俺は、お節介ありがたく借りておくよ。ぜったい、返すからな」  その場で、借用書を書き判子を捺すと、相手の捺印の場所に、どこから入ってきたのか小さな綿毛が一つ落ちて来た。    
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