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「う――ん! って、どうやって降りるのこれ⁉」
久しぶりの生身の肉体に困惑してしまう。 ましてや、男性の体なんて初めてだ。
足の動かしかたすら忘れてしまっている。
椅子の上から下に降りようとしたとき、プルプルと緊張してしまい。
ガタンッ! と、椅子が倒れてしまう。
「え? って、ぶへぇ‼」
グイっと、喉に圧力がかかり、苦しさが一気に増してきた。
ヤバい! まさか体を借りた瞬間に死ぬことになるとは思わなかった。
ごめんなさい……。
そう思って力を抜くと、不思議なことに気が付いた。
「あれ? あ、足がつく?」
トントンと硬い床の感触が伝わってきた。
ゆっくりと、冷静に縄から顔を取り除き、上を見てみると、天井に括られていた縄の一部が解け、長さが増していた。
これでは、まったく意味が無い。
「へぇ、やっぱりドジだ」
(ドジとか言ってんじゃねぇよ! 俺の体だぞ! 大事に扱え!)
「あ、こっちの声聞こえるんだ」
しかし、先ほどまで死ぬつもりだったのに、大事に扱えって笑えてくる。
だから、詐欺にあうんだなぁって思った。
(は? なんで知っているんだ?)
中の男性が問いかけてくる。
「へへぇ、秘密だよ~♪」
(おい! 俺の声で気持ち悪い口調で喋るな! 寒気がするだろ)
「はいはい、黙っててねぇ」
一旦、軽くシャットアウトして、あちらの声を聞こえなくした。
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