私、それまで

進級前

春休みに兄ちゃんが帰省したときは2週間いました。
先輩からのお土産でいくつか見せてくれた中、私が一番気になったのは小さな名刺でした。
「ロンドン ベーカー街 221番地Ｂ」
大好きなシャーロック様の住所があるとは！

小学校５年になっても読書をしない私、見かねた兄ちゃんが進めてくれたのが｢シャーロック･ホームズ｣でした。
スマホも、監視カメラもなく、新幹線もない時代。推理と知識と体力や観察眼、変装など古典的なことだけで難事件を解決する小説に虜になったのです。
原文を読みたくて英語を勉強したり、イギリスやヨーロッパの歴史に興味を持つようになったのです。
｢貸すだけだから｣と言って見せてくれました。でも、2週間後無理やり取り返されてしまいました。
仕方ありません。先輩のお土産だとか言ってましたしね。
その兄ちゃんは、こちらの友人たちと遊びに行ったり、食事をしたり、悔しいくらいにEnjoyしてました。家にいるときは、何回もきみちゃんとオセロしてました。わざと負ける時、きみちゃんにバレて怒られてました。でも、本当は同じくらいで勝つと喜ぶ、負けると悔しがるのはきみちゃんでした。