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連絡
兄ちゃんが東京に戻ってしばらくした頃、きみちゃんがいつもの時間に起きて来ません。
「風邪ひいだけだから大丈夫」
そうは言ってたけど、3日も続けば大丈夫ではありません。怠いからか食欲もなく、知らなかったんだけど、ずっと微熱があったそうです。
祖父が亡くなった後、腎臓機能が衰えたこともあり心配したり母はかかりつけ医につれて行きました。そこで、大きな病院を紹介され母がそのままつれて行きました。
それからがたいへんでした。コロナだったのです。県内2人めでした。家族全員の自宅待機、きみちゃんの入院。翌日には濃厚接触者として隔離、検査、聞きとり。兄ちゃんに連絡し検査したら感染してることが確定。医師の話では、兄ちゃんが持ってきたのではないか、って。
先輩がヨーロッパから持ち込んだらしいのです。兄ちゃんが入院中に先輩の家族からお詫びがありました。お互いに隔離されていた中、どうしても謝りたかったとのことでした。
幸い、あちらの家族は先輩以外は陰性でした。我が家でも兄ちゃんときみちゃん以外は陰性でした。
きみちゃんは重症となりました。面会にも行けません。「出来るだけのことはしていますが、最悪の場合も覚悟はしてください 。」そんな言葉、ドラマの台詞でしか聞いたことありません。
どうにか退院しても兄ちゃんは、帰ってこれません。軽くすんだのは若いからでしょうか。
「きみちゃん、ゴメン。すみません。俺が帰省しなければコロナにならなかったのに。」
相当落ち込んでました。兄ちゃんを責めてもきみちゃんは治りません。きみちゃんの退院はもう少しかかりました。
「ゴメン。きみちゃん。俺、どう謝ったらいいのか。」テレビ電話から泣き声が聞こえてきました。
「今までと同じでいいよ」
きみちゃんは答えてました。私は泣いていました。
お兄ちゃんが悪いわけではない。先輩が悪いわけでもない。ちょっとだけ運が悪かっただけです。
誰が言い出したわけでもなく、そう話した私たちです。
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