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おまけ【高梨龍也の独白】
好きな体位を聞かれたら「バック」と答える。
どれだけよく似た兄弟といっても、違いを探せばいくつもある。笑い方が違う、骨格が違う、匂いが違う、体温が違う。見れば見るほど違いばかりを目が追ってしまう。でも、唯一声だけはとてもよく似ていた。喋り方は違っても、鼓膜を震わせる低音が心地いい。耳元でささやかれると堪らなくなる。
バックでするときが一番優斗を感じられる。
雅人としながらいつも優斗を想像する。今後ろにいるのは優斗だと思うと堪らなく興奮した。名を呼ばれるだけで息遣いと時折漏れる吐息だけでいきそうになった。
「興奮しすぎ」
なんて、雅人に揶揄われるほどには夢中になった。
「龍也さん、龍也さん」名を繰り返し呼ばれて一瞬意識が飛んでいたことに気づく。目の前には焦がれ続けた優斗の顔がある。それがいまだに信じられない。都合のいい夢なんじゃないかと思ってしまう時がある。
「優斗」
確かめるように名前を呼んでその体を正面から抱きしめる。ずっと夢見てきた。すべて本物だ。いとおしむように俺の髪をすく指先も、ほっとしたように微笑む笑顔も、すべて俺が欲しかったもの。
「まだいけますか?」
「余裕」
その言葉に優斗は笑って、その後深く深く口づけた。
「体位変えますか?」
「いい、このままでいい」
このままがいい。
もう、声だけで我慢しなくていい。笑顔も、匂いも、体温も、すべて。今は俺のものだ。
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